この本
　ハイライトが
　少ない

　慧音先生全体的に曇りっぱなしで可愛いよね……！
　もとい、この「リバースデイ」は水中花火さん原案のお話しをうがつまつきさんが描く、ということでいったいどんな話になるんだろうとわくわくしながら読んだのですが、驚いたような納得したような。この黒さはたしかにあさつき堂だ……！　と思う反面、「いつものあさつき堂」と言ってしまうには、ちょっと黒さの方向性が違うのが面白かったです。
　水中花火さん自身が作画したらどうなるんだろうなーとかもちょっと思い、この手の共同作品は読んでいて面白いですね。ネームとか公開しないだろうか。

　ハイライトが最初から消えている系物語。

「取り替え子」という、人の胎から生まれてしまった妖のお話し。彼女は果たして人間なのか妖怪なのか、その存在の行き着く先は――という設定からして黒々としている感があれですが、人間にして妖怪な慧音先生がからむことでいっそう黒くなっています。

　生の在り方に苦悩する先生可愛い。
　ほぼ全編通して曇りっぱなしで可愛い。

　一方で「るみ」という取り替えられた少女もまた可愛いというかコレ描写がエロちいくていいよね……血とか涙とかいやらしいよね……と思わずにはいられない感じ。エロ可愛。
　作品全体を通して、ある種の伝奇的な雰囲気があるのですが、こうした暗く重い雰囲気とエロっちい雰囲気は大昔から相性バツグンで、雰囲気の相乗効果が出ていて楽しかったです。るみっくすしたいぞ。
　ラストに向かって転がり落ちていくような話の構成が素敵でした……そして相変わらず……この笑顔……笑顔……本当に恐ろしいのはハイライト消えてるのではなく笑顔……


　あと、あとがきがめちゃくちゃひどかったです（良い意味で）。おい誰か早くこいつらを黙らせろ。

　作品中にちりばめられたイメージが素敵な本です。
「二度目のハッピーバースデー」というタイトルからしてわくわくどきどき感を抱かずにはいられませんが、貝殻とか、海の潮騒とか、生まれることとか、体温とか、作中で描かれる切片のひとつひとつが綺麗でした。海の砂をつめた瓶みたい。

　内容としては、香霖堂へと訪れた村紗は、ふと見つけた貝殻をきっかけに、幻想郷にはない「海」について想いをはせる――というところから始まる、村紗の過去話です。未だ海にしばりつけられた幽霊で、人を沈めていた頃のお話し。

　冒頭の幻想郷版村紗が可愛いだけに、過去村紗のおそろしさと、どこか哀しさがより際立っていました。沈めた死体の手を握って、握り返してこないことに対して沈黙してしまう村紗がこうせつなくて哀しい。
　救われるまでのお話しなので海のように重く暗いですが、きちんと救われるところまで描いてあるので、読後感がすごい良かったです。白蓮とのやりとりが良いよね……良い……

　過去ぬえちゃんはこれはこれで可愛くて悶える。
　ダブルピースしてください。

　村紗の苦悩と哀しさ、そしてその救済が丁寧に描かれて作品で、読んでいてほわほわしました。ほわほわ系白蓮の微笑みに和む。
　握りしめた掌が貝殻のようで、耳にあてたら潮騒が聞こえそうな、素敵な本です。

　わぁいどろどろ　ひとひらどろどろ大好き。

　なんというか生きることも愛することも綺麗事ではすまないという本。死ぬことから逃れようとする神子様と、神子様に恋する布都と、逃げることのない屠自古のお話し。三角関係、というには若干歪つな関係性が大好きです。

　なんというか布都の恋だけはどろどろしていないんだけど、恋が報われたことによって愛にかわった瞬間にどろどろどろどろしているような、でもそのことを誰が容赦して誰が審判するのか――みたいな、恋と愛と生と死についてのお話し。でもやっぱり恋かなあ、布都ちゃんのアレは。

　布都ちゃん可愛い。

　内容としては神霊過去話、いまだ死す前の三人のお話しなのですが、これがもうどろどろしていて凄く素敵です。生にしがみつく神子様と、神子様に聞こえているのだと思いつつも色々悩まずにはいられない布都ちゃん、そして凄くアレな立ち位置にある屠自古。
　この三人がどろどろしつつ結末に向かって転がり落ちていくまでの物語です。いやー黒い。黒可愛い。でもだれがそれをせめられるというのか、みたいな。

　タイトルコールが入るところが物凄く好きです。こういうの、良いよね……良い……

　布都ちゃんの！
　綺麗な髪に！！
　触りたい！！１！１

　アッハイ。興奮しすぎましたすいませんでした。怯える布都ちゃんが可愛いとか笑ってる布都ちゃんが可愛いとか泣かせたいとか泣かせたいとか想ってないです。嘘です思いました。
　なぜかというとこの本、布都ちゃんがもの凄く可愛いのですねー。「物部の涙」というタイトルにあるとおり、泣く布都ちゃんとか笑う布都ちゃんとか怯える布都ちゃんとか、表情――そして感情が豊かに出てきている本だからです。

　ドヤ顔なアホの子しつつも、暗く重い過去を持つ物部布都。
　髪に触れられることを異常に怯えるその理由には、彼女の過去が絡んでいて――という布都ちゃんの過去にまつわる物語。

　好奇心にしたがって動く魔理沙とか、その魔理沙に連れられてやってくるさとり様とか、キャラのひとりひとりが可愛いのですが、やっぱりその中でも布都ちゃんが魅力的に描かれている布都本でした。
　泣いている布都ちゃんが可愛くて。
　だからこそ、笑っている布都ちゃんは、もっと可愛い。
　そんな本です。

　香霖堂バージョン紫は最高です（挨拶）。
　いや紫に限らず、香霖堂バージョンはやたらとフリルが多かったりフェティッシュだったりで大好きなのでみんなもっと書いたり描いたりするといいと思います。表紙のゆかりん（香霖堂バージョンをろりゆかりんと呼ぶのは果たしてローカルなのか）からして、こう、スカートまわりとかおみ足とか指とか腰とか胸元とか傘とか靴とか帽子とかリボンとかフェティッシャーで最高だと思います。
　そして改めて思うこと。紫のリボンが赤色だということ。
　赤と紫。
　虹の七色の、端と端。
　一番近くて、一番遠い色。

　そんなわけで、「NEVER NEVER NEVER LAND」は、八雲紫と博麗霊夢の物語です。

　いまだかつて・どこにもない・空想や夢にしか存在しえない・楽園のお話し。ネバー、ネバー、ネバー、って連続するとたいてい意味が強調されるのだけれど（一番多いのはこの後にギブアップ、と続いて「決してあきらめたりしないんだからねっ！！」とする）、そのあとにＬＡＮＤ、とくると、何となく物寂しさが増す気がします。二重結界ならぬ四重結界ですよ。言葉で区切られてしまうのですよ。
　そして区切るように、表紙めくって赤い色の遊び紙が挿入されているのがなんとも素敵だと思います。赤と紫。そんなゆかれいむ本。

　個人的にゆかれいもレイマリも好きなのは、そのふたつが明らかに区別されている――紫と霊夢の関係性と、霊夢と魔理沙の関係性が決して同じにはならないからだと思います。４Ｐ目、紫に膝枕で耳掃除してもらっているシーンで「ですよねー魔理沙には頼めませんよねー」みたいなことを考えてしまってごろごろ。同時にそれを紫にやってもらっている姿を見てさらにごろごろ。紫以外にはしてもらわないんだろうな霊夢……
　そして魔理沙に乱入されても紫と霊夢はまったく動じず、乱入した魔理沙だけ硬直しているのがツボ。紫と霊夢と魔理沙、という三人の関係性は好きで、その三人が中心に描かれている本は読んでいて幸せになります。

　すなわちゆかれいまり。

　紫は霊夢の向こうに魔理沙を意識するし、魔理沙は霊夢の向こうに紫を意識する。それはその居場所は、絶対に自分では立つことができないところだから――とはいえ、そうだからこそ（いまだかつて・どこにもなく・空想や夢にしか存在しえない）場所だから望んでしまうのが世界の定め。
　そんなことを子供のように望んでしまう、紫のお話しでもありました。
　……でもどんなに姿を小さくしても、子供のように甘えても、紫は紫でしかなくて、他の色にはなれない――と想い知らされてしまう話でもありました。そうだからこそ、やっぱり望むのかもしれないけれど。

　そして魔理沙も可愛い。
　超可愛い。
　バカ可愛い。
　対抗するように香霖堂バージョン魔理沙服に着替えてくる魔理沙超可愛い。
　なんというか可愛さの詰まった本ではありました。紫様はたいてい「綺麗」（裏にある怖ろしさも含めて、美しい）のだけれど、この本では心情面や表情のひとつひとつまで含めて、あ、可愛いな、と思える素敵な本でした。

　個人的には、霊夢に膝枕されながらも、「――ねぇ、素敵な巫女さん」と呼びかけている紫がツボ。いままで散々霊夢霊夢と言っていたくせに、そこから弱音に近い何かを吐露する前に、「素敵な巫女」という線引きを自分からしている紫が……なんというか……可愛いというか悲しいというかほほえましいというか。
　境界の妖と素敵な巫女。
　どうしようもないほどに八雲紫で、八雲紫以外の何モノにもなれない彼女。
　変わってゆくことができる魔理沙らとちがって――ということを、彼女の笑みの向こうに考えずにはいられないのでした。どっとはらい。

　……そして秘封クラスタ的に１７Ｐの一コマについていろいろ語りたくなるけれど割愛！「私にはおおよそこういう時代がなかったし」というのが、アレはあくまでも別物でしかないのか、それともアレと連続してはいるものの＜八雲紫＞ではない以上いまの自分とは決定的に異なってしまっているのだろうか、とかいろいろ！いろいろ！　でもゆかれいまり本なので割愛。
　こう、さりげなく一コマだけアレが出てくる漫画大好き。

　まあそれはおいといてゆかりさますりすりしたい以下略。こんどこそおわり。

　霊夢さんマジ可愛い……
　霊夢と魔理沙のお話し、というか飛ぶ魔理沙を見遣る霊夢のお話しなのですが、基本全編霊夢視点で描かれていて、「魔理沙を見る霊夢」がスゴイ可愛いです。
　だって開幕のろけ！　堂々とのろけ！　霊夢さん素敵！　まっすぐに魔理沙を見つめてのろけ宣言する霊夢が素敵すぎる……そして魔理沙に見られているとまっすぐ見つめられないシーンが……マジ……かわ……可愛……危うい想像しちゃうところとか……悶え……

　霊夢が可愛すぎて死ぬ。

　子鳥の巣立ちを見送る母のような、あるいは見送っていたつもりが気づけば追いつかれていたような、そして追い抜かれて見せた背中に触れたがるような、そんな霊夢さん。この近づいたり離れたりしながらでも最後には表紙のごとく接近する距離感がたまらなく良いです。　もっとくっつけ！　べったりくっついて空を飛べ！　そこだちゅっちゅだ！　と叫びながら読んでいました。危ない人だ。

　でも霊夢と同じくらいに魔理沙も可愛くて死にます。とくにチルノたちと遊んでいる天真爛漫なところと、霊夢に予想外なことを言われて驚きつつ照れたりしているところのギャップさに悶える。何この霊夢にしか見せないような表情……！　いや霊夢も魔理沙にしか見せないような表情見せているのでなんかもうはやくちゅっちゅしろ。
　タイトルが「真夜中の見えないキス」なのできっと素敵なちゅっちゅ本と思っていたら想像以上に超素敵なキスでハハハ悶え死ぬ。どんなキスかは是非読んでください。

　内容は、幼いころ、魔理沙に飛び方を教えていた霊夢。初めは手を繋いでいないと飛べなかった魔理沙が、やがては一人で飛べるようになり、今では自分を頼ることもなくなり――というところから始まる、霊夢の魔理沙のお話しです。

　空を飛ぶことと、距離感のお話し。

　飛べないときは手をつないでいる距離で、飛べるようになってからは離れてしまって、そしてやがては――という成長したからこその現在を描いています。
　魔理沙、いったいどんな表情して霊夢にアレを言ったんだろう……とか考えるともうそれだけでお腹いっぱいになるのですが、それに真っ向から応える霊夢が最高に可愛かったです。可愛いしかいってないなこの感想。

　表紙の箔押しが好き。黒地を基調にした表紙にこの種の箔押しをすると、きらきら光っているのが際立って綺麗というか、夜の明かり感が強まって好きなのでした。
　角度をかえるだけで印象がかわるので、本を飽きずに傾けたりしてきらきらさせて遊んだりします。箔はシンプルにして最強……！

　面白かった！
　蒼空市場さんが本編１・蓮子パートとエピローグを、ストカメさんが本編２・メリーパートとプロローグを担当するという、分担方式の合体本。
「蓮子だけが幻想郷に迷いこむ」でもなく、「メリーだけが幻想郷に迷いこむ」のでもなく、、「蓮子とメリーが一緒に幻想郷に迷いこむ」のでさえなく、『蓮子とメリーが、ばらばらに幻想郷に迷いこむ』というコンセプトからしてヤラレタ！という感じの面白さがありました。

　蓮子も、幻想郷へ。
　メリーも、幻想郷へ。

　けれどそれぞれがそれぞれに、離れてしまった相方のことを想いながら幻想郷で冒険を繰り広げる。蓮子はメリーを求めて。メリーは蓮子を求めて。そして幻想郷の面々と触れる中で、その場にはいない相方のことを思い起こす――という綺麗な構成。
　良いですね、こういう合体本は。ひとつの事件を別視点二つから、二組のサークルさんがかく、という読んでいて楽しい本でありました。

　蓮子パートは、人里に迷いこんだ蓮子が、布都ちゃんに襲われたり布都ちゃんと冒険したり布都ちゃんに迷惑かけられたりしながら博麗神社をめざす話。布都ちゃん可愛い！！！迷惑可愛い！！！ラーメンの器持ちすぎだよぉ！
　仮にも五ボスのはずなのにこのアホｶﾜｲｻ……いやまあ船に当たり判定がある時点で……いやしかし可愛い……こないだの蒼空市場さんのシリアス本とはうってかわって、ちょっと明るめでかなりアホで超可愛い布都ちゃんの大活躍が見られます。
　そして巻き込まれまくる蓮子。いつも通りともいう。頑張れ蓮子。負けるな蓮子。
　あと蓮子におっぱいがありました。

　メリーパートは、森に迷い込むメリーを、幽香が迷ったり導いたりするお話し。蓮子パートとちがって超どたばた騒ぎが起きない代わりに、幽香や射命丸といった力の強い妖怪が、＜メリー＞という存在に興味を持つお話しです。
　知らぬは本人ばかり。
　全体通して幽香が格好いいというか、序盤の「善い人」ってメリーから言われたときの反応がめちゃんこ格好良かったです。このドヤ顔……素敵……！
　笑っている妖怪ほどおそろしいものです。そんな幽香を困らせるトラブルメーカーのメリーも可愛いですが。やっぱり秘封倶楽部はお似合いですね。
　あとメリーにおっぱいがいっぱいありました。蓮子より大きかったです。

　そしていちゃいちゃする蓮子とメリー。おしあわせに！

　とりっくおあとりーと、なハロウィンのお話し。ごんぎづねの恩返しが如く、博麗神社に再び現れた狐魔理沙。本物魔理沙と霊夢、三人で始まる、お菓子といたずらの物語です。
　狐が化けるのは、「霊夢が一番逢いたいと思っている人」。そんな一言から始まる、なんというかこう甘いレイマリです。甘い。砂糖菓子のように甘い。むしろ弾幕で魔理沙がばらまく星くらいに甘い。
　いたずらをさせてくれたらお菓子をあげるわよ、と言いたくなるよな素敵な甘さでした。人間でない狐魔理沙ちゃんに指摘されて色々考える霊夢と魔理沙が可愛いです。そしてその反応が二者二様なのがベネ。

　いいなあこういうの。霊夢が素敵だなあ。

　甘いお菓子のような素敵な本でした。
　あとは表紙２−３部分に赤一色・白ぬきで印刷してあって、このデザインがかわいかったです。遊び紙の赤を両面にはさんであるので、見開きで真っ赤で色合い的にも綺麗ですね。遊び紙にオペーク白印刷したくなるな……！（病気です）

　無理笑顔ダブルピース魔理沙ちゃん可愛い。ハイライト消したい。という個人的趣向はおいておいて、霊夢と魔理沙の記念日についてのお話しです。

　実家から送られてきた誕生日プレゼントを、受け取ることなく香霖に処分を頼んだ魔理沙。けれどいざ本当に処分されてしまったとき、彼女の心中にわいたのは複雑な感情だった――

　という魔理沙の感情をめぐった本でもあります。記念日、というのは特別な日ではあるけれど、同時に一生切り離せない日でもあるわけで。良い、悪い、ではなく、特別であるということはある種の重さを伴うような気がします。
　特に家を飛び出て来たような魔理沙にとっては。

　それと同時に、自分の誕生日がいつかさえ知らない霊夢。対照的な二人が、記念日を作るうとする話でもありました。でも作るまでもなく――というある種のレイマリいちゃいちゃ。
　誤魔化すのがうまいくせに嘘をつくのが下手な巫女と、嘘をつくのがうまいくせに誤魔化すのが下手な魔法使いのカップリングは大好きです。こういう逆だからこそ……っていう組み合わせの表現は超好みなのでした。
　つまりカップリングはまざりあうわけですよ……！レイマリまざりあえ……！（それはいっぱんむけなのでしょうか）

　お風呂上がりに髪をなすがままにふかれている魔理沙が可愛いです。良いなあ……！

　あと、「とん」って突いたときの魔理沙の胸がまっ平らで可哀想可愛いですね。

　アッこの本ズルイ（褒め言葉）
　何がズルイかと申しますと、この短い本の間に伏線と皮肉と隠喩が思いっきり詰まっているというか、魔理沙もフランもパチュリーも物凄く可愛いのに「これが魔法に関わるということか」みたいなおぞましさがちょっぴりあるというか。
　何を言ってもネタバレになりそうな本ですが、読み終わったあとに「ああ！」って叫べるような本です。

　読んで。

　内容としては、いつも通りに魔法書を盗みにいく魔理沙に対し、「この本だけは渡せない」と徹底抗戦するパチュリー。勝てない魔理沙のもとに、フランが「私も手伝ってあげる！」と云いだして――
　フラン曰く。――私、むかしは魔法使いだったんだよ。
　そんな魔にまつわるものたちのおはなしです。

　ところでこの後書きの「普段よりもふんわり明るくポップな感じにかけて楽しかったです」というのは突っ込みまちでしょうか！
　いやでも……確かに普段より……うん……面白かったです、ハイ。
　

「あおいあか」サークルてとてさんと、サークル小匙三杯さんが、それぞれ同テーマを元に漫画を描かれた合体本です。
　紅い巫女が、まだ青臭かった頃の時代。
　あるいは紅い少女に、紫色の妖が肩入れしていた時代の物語。

　てとてさんのお話しは、未だ先代巫女が生きていたころの時代。妖に両親を殺されて孤児になった少女を、「巫女の素質がある」と拾ってくる紫。
　そして、「博麗の巫女」になるということは、それ以外の全てを捨てることにひとしいのだ――という楽園の巫女の理についての物語でもありました。
　博麗の巫女とはどういうものか、と。
　巫女になるのはどういうことか、と。
　それを丁寧に教えていく、ある意味では子育てのようなやりとりが、微笑ましいような、あるいはおぞましいような。紫のやっていることは紫の愛情に基づくことで、でもそれは霊夢個人に向けられているというのともちょっと違って、そして彼女は何よりもおそろしい境界の妖で――でも、やっぱりその愛情に嘘はなくて。
　母親は菩薩と鬼の両面を備えている、とも言いますが、そんなことを思い出しました。先代巫女のくだりがちょっと切ない……でも切なさが良い……
　でも一番せつないのは、八雲紫そのものなのかもしれません。


　小匙三杯さんの話は、物倉のような部屋から空を見上げることしかできなかった孤児の少女を、紫がさらって空を飛ぶところから始まるお話し。
　――或る妖怪の手記。
　という形で、霊夢の成長を見守る紫の綴ったお話しです。
　てとてさんのパートが「博麗の巫女」を重視したものに比べ、小匙三杯さんの漫画は「霊夢」という少女の成長記録でありました。巫女としては才能があっても、人間とうまく付き合えない霊夢に対し、まるで母親のように接する紫。
　けれど、彼女は「母」にはなれない。
　母にとって、子は特別な存在で。
　八雲紫という妖にとって、特別な存在とは、博麗の巫女ではなく、幻想郷そのものなのだから――という、霊夢が巫女と少女の狭間で揺れ動くように、妖と母の間で揺れ動くような紫の心を描いた作品でもありました。
　それがどこへたどり着くかは、読んでのお楽しみ。

　……でも紫のいちばん卑怯なところは、「私のことが好き？」ってきかないことだよなー、それ聞いちゃったら答えられないからだよなー、と思いながら読んでいたら霊夢がぽろっと言ったりして、そのあたりで大変非常にもだえました。もだえしぬ。
　揺れ動く心の話でした。

　レイマリも大好きだけど、ゆかれいも大好きなので、（このふたつは共存すると個人的には断言しています）だばんだばんとはねころがれる素敵な本でした。ありがとうございます。

　東方地霊殿をベースに、作者のしんのさんが独自にコミカライズした、いわゆるひとつの本編漫画です。今回の本はSIDE-Aということで、「地霊殿に至るまで」という前日談になっています。
　でも読み終わるまでその情報いっさい知らなくて、最後に＜続く＞と出てきてびっくりしました。というのも、この一冊だけで綺麗に物語としてまとまっていて、「ああ素敵な前日談だった……！」と思っていただけに、まさかの本編まで全部とは。

　続きがとても楽しみな一冊であります。

　何が好きって、やっぱりこういったお燐とお空の関係性が好きです。弱かった鴉とお姉さんぶった猫、ところが頭たらずだからこそ純粋な願いによって神様の力を得たことで、力に押し流されて変貌してしまう霊烏路空。そんな彼女を止めるために、お燐は必死で駆けずり回る……！
　という熱血少年漫画系です。個人的なおりんくうキーワードが＜温度＞なので、こういった熱を孕んだ、熱血している物語が好きなのでした。おりんくう良いよね。

　テーマを持った短編集、ってあんまり見なくて（なぜなら同人だとみんな短編ごとに一冊一冊別々に本作っちゃったりするから）、そういう意味でも楽しめた本でした。

　嘘で固めた、嘘付きの物語。

「嘘つきの涙」はその名の通り、嘘付きが泣く話です。迷いこんだ猫に、つい感情移入してしまう魔理沙。けれど――
　という、黒猫を通して魔理沙が自分のことや、黒髪の彼女のことを――きっと考えないようにしていたことを――思い起こさずにはいられない話。
　思い起こさずにはいられないのに、それを嘘、で内側に押し込めてなんてことはないという顔をする魔理沙に嘘つきというか強がりというか思いっきり泣かせたくなりました。

「嘘つきの手のひら」は、最近神社に訪れない魔理沙の家に霊夢が訪れるお話し。
　霊夢から視た、嘘付きの少女のお話しです。ばればれの嘘だとわかっていても、それを気づかないふりをする嘘。
　ラスト二頁の霊夢の感情表現が綺麗というか可愛くて、嘘つきでも可愛いというかきっと繋いだ手の体温は絶対に嘘じゃないよとか勝手に思っていました。レイマリ良いよね……良い……

　最後の「嘘つきの心臓」は魔理沙の心臓をえぐり出す話です。嘘です。
　心臓の鼓動と――心のお話し。言葉ではどんなに嘘をついても、伝える鼓動は正直だし、伝わる心は正直なのだという、そんなお話しでした。まわりくどくも正直な、でもちょっぴりいやらしくて可愛らしい感情のお話し。
　嘘をつくのも、言葉を発するのも、触れるのも、全部感情があるからで。
　感情の触れ合いのような短編集でした。

　そしてエピローグが何と言いますがもう悶えるの一言なのでみんな読むといいと思います。後書きのあと、不意打ちのようにさらっと描かれるエピローグに一気にうちぬかれて床ごろごろしていました。
　嘘つきの短編三つやったあとでこのepはズルい……ころっと転がっちゃう……
　２６ｐの四コマ目はぽろっと零れてしまったように言うくせに、五コマ目はそれを本当だと思いこむように薄笑い浮かべつつはっきり言う魔理沙の態度がたまらく好き。でそれを聞いた次頁の霊夢の表情は魔理沙にしか見えないんですよ！なにこのズルい！悶える！
　きっと表情は嘘をつけてないんですよ魔理沙……可愛い……みたいなことを想いつつ唐突に終わる。素敵な本でした。

　サヨナラ・ヘヴン、というタイトルが良いです。
　永遠になってしまった少女たち。彼女たちは死ぬことはなく、たとえ世界が終わろうが黙示録の日が訪れようが天国にも地獄にも辿りつくことはない。彼女たちは終わることなく、永遠に生き続ける。
　二人で。

　でも……本当に、二人で？

　そんな、サヨナラを廻る物語。あんまり語ると壮絶にネタバレになりそうなので黙っておきますが、この「世界の終わりなのに、からっとして暗いところがない二人と、あっさりと終わる世界」という突き抜けて蒼くてどこかさびしくなる空みたいな雰囲気がたまらなく好きです。
　あと妹紅がいやらしくて輝夜が可愛い。ぼろぼろ泣く。読者も。そんな素敵な本です。

　一目ぼれだった。始めてであったときから、美しいお前に恋をしていた。そしてそのことを、彼女はきっと気づいていないだろう――
　そんな想いを秘めたままに魔理沙と接する、霊夢の想いの物語。霊夢視点の、霊夢と魔理沙のお話しです。

　霊夢視点での、魔理沙への想いのお話しは個人的にはちょっと珍しい感じで読んでいて楽しかったのですが、このお話の何がいいって「霊夢が、魔理沙が抱く想いも把握していて、気づかないふりをしている」ということだと思います。（恋心とはかくも美しいことか〜）
　そんな風に魔理沙を見守り想うという現状に満足していた霊夢が――けれど何事もそのままで居られるはずもなく――関係性が崩れることで揺らぐお話しでもありました。
　……良い……
　何が良いって、霊夢は悟った風に言って満足しているのですが、それはやっぱり霊夢の視点であって、「それが全て」ではないとまっすぐにつきつけてきているのが良いと思います。

　ある意味で、恋は盲目。

　いろんな人から突き付けられているのに、とうの魔理沙からぶつけられるまで逃げ続ける霊夢さんが非常に可愛くて、ああ霊夢と魔理沙の関係性はどこへ転がり落ちてゆくのだろう――とはらはらどきどきしつつ読めました。
　表紙みたら霊夢のほうが子供っぽい印象があるのが良いですよね……素敵……でも魔理沙の右手は涙をすくいながら、左手はちゃんと赤いリボンをつかんでいるのが……うん……良い……

　憑依……フュージョン……いやらしい……これは神霊廟の認識を改めないといけませんね……ああ隠語ってそういう……
　みたいなことを思わずぶつぶつ呟きたくなるような、るくしあ大陸のレイマリ本です。

　憑依に興味を持つ魔理沙。「憑依することは、霊夢の中に入って一つになることだ」――という発言をきっかけに妙に恥ずかしくなる霊夢と魔理沙。そこに紫が現れて……

　というところから始まる、フュージョンについてのお話し。レイマリいちゃいちゃ。でばがめゆかりん。
　全体通して顔を赤らめて恥ずかしそうにしている霊夢と魔理沙が可愛いです。ういういしいというか気恥かしいというか。サディスティックじゃないいちゃいちゃも良いものですね！
　紫が若干怖いこと言っているようなのは気のせい。実際黒い。実際サド。あなたと一つになりたい……！（ただし肉体は失われる）。どっちかというとフュージョンじゃなくてポタラですネー。古いか。でもサドかわいい。

　でもなんだかんだ言ってちゅっちゅぺろぺろしているレイマリは良いですね。作者さんが後書きでかいていらっしゃいましたが、魔理沙はくるくる動くので見ていて可愛いというか読んでいて楽しいのでした。

　ところで猫魔理沙に首輪ついてないのナンデ？

　おかっぱロリ霊夢本です。霊夢ちゃんカワイイヤッター。
　良いことも悪いことも正夢に見てしまう少女、霊夢。奇妙な力を持つが故に、人里で彼女に寄りつく者はいなかった。けれどただ独りだけ、魔理沙だけは躊躇なく歩み寄ってきていて――という霊夢の過去話。

　博麗、になるまえのお話しです。

　裏表紙でも描かれている霊夢ちゃんが超可愛い、というのがまず読んだときの第一印象でした。だっておかっぱでろりっこで巫女で人生に苦悩しているんですよ！？　というかなり駄目なアレを抱きつつ、でもロリ魔理沙もぷにぷにしてて可愛いです。泣かせたいよね魔理沙。
　もとい、孤独を抱える幼い霊夢。
　けれど人間は寄らなくても、人間以外のものはその奇妙な力にひかれるように寄ってきて――未来から寄ってくる妖たちの、正しく夢。
　……明日からやってくる妖と、明日と約束しながらも別れた人との差異に、こう、胸がうずうずするものがありました。こういうの、よいなあ。

　友人の結婚式に参加したのですが、お嫁さんは確かに綺麗だけど、綺麗であると同時に幸せそうで、あの幸せそうなのがいいよね――といきなり本と関係ないこと書いていますが、そんな感情を想いだす本でした。

　結婚についてのお話し。

　つい先日結婚式を執り行った霊夢が、そのことを想いだしつつ魔理沙と縁側で語るお話し。若干ほのぼの。そしてしっとり。
　結婚、という意味が、家族、というのと繋がっている霊夢が可愛いです。でもよく考えてみれば、彼女たちって家族、というものから縁が遠く、独りきりで生きているからこそ――と思わずにはいられないのでした。
　結婚するということ。
　家族ができるということ。
　一緒に生きるということ。
　そんなことを、幻想郷で生きる独りと独りが、寄り添って考えるようなお話しでした。素敵。

　歩いているときと走っているときでは世界が違う――といったのはどこの誰だったか。走っているときは周囲が見えなくなるが故に自分自身の体を先まで把握し、歩いていると逆に周囲を見渡す余裕ができる、みたいなアレですが、じゃあ空に浮いている彼女たちはいったい何を想っているのだろう、という話でもあります。

　飛ぶ、でなく、浮く。

「いきもののおもみ」は、魔理沙が箒を折ってしまい歩く話です。自分の体の重みを感じながら、歩むたびに踏み込む足裏の感触をあじわいながら――あるいは夏の暑さや、森の匂いや、いろいろなことを考えながら歩くお話しです。
　そして同時に、彼女は想うのでした。
　重みを無視したように――たとえば幽々子や、霊夢のように――浮くとはどういうことなのかを。

　そんな生きるということを、歩くことと浮くことで表現した、素敵なレイマリ本でした。

　静かにゆったりと語られる歩きパートと、霊夢と遭遇してからの一連の流れが物凄い好みで、何度も読み返してしまいました。こういう自問自答しながら答えに向かって歩いていくような話いいよね……いい……

　１１ｐから１２ｐの流れが一番好き。最高。是非読んでください。

　２０１０年に出された本「とりかごひめ」と若干絡んでいるような本です。あの本は、鳥かごの中だけで満たされていたお姫様たちが、とりかごの外にも素敵なものがあるのだと気づいてしまって――という本でした。

　今回の「ゆめみたあとで」は、鳥かごの外を知ってしまった、そのあとのお話し。

　ああ、だから「ゆめみたあとで」なんだな、と読み終わったときにすっと胸に入ってきました。夢から覚めたそのあとで、みたいな。夢から覚めてしまったら、もう夢の中へは戻れないし、夢は淡く消えてゆくけれど、それでも夢見ていた日々は嘘ではなくて、でもだからこそ――という、あの目覚めたときの淡い感情が形になったような本です。

　世界の外を知る前は、閉ざされた館の中が、彼女にとっては世界の全てで。
　その中だけで、彼女は満たされていたけれど。
　館の外にも、幸せなものはいっぱいあって。
　幸せになってしまったことを、思い悩むフランちゃんのお話しでした。

　……フランはこう「私って幸せになって、これでいいのかな」って思い悩んでいるのに対し、そんなフランに対してレミリアは微笑むのだけれど、こう、微笑む理由をフランちゃんは気づいているのかなー、とか考えると胸がふわふわ。ついでにやにや。

　何というか、互いが互いを思い遣るが故に悩むような本は好きです。
　感情が交差して、触れあうような本でした。そういえば虹の袂って、二つあるのよね。

　そうくると思った――！（超褒め言葉）

　ヘルメットが直せませんはいっつも真っ直ぐな話の中に（それこそ塩スパイスのように）一味効いている素敵な話を描かれるサークルさんなのですが、今回の話はモロ好みでした。
　だって、タイトルが『ピースフルワールド』。なんかみんな楽しそうな表紙。そして奥の方に、ちょっとだけ見えるスキマ。
　これでなんというかヘルメット節を期待しないほうがおかしいですよね！というヘルメットファンには期待に応え、あるいは初めて手に取った方には「おお！」と思わせるだけのストーリーテラーっぷりが発揮されていました。
　この短編での完成度と、オチの鮮やかさ。ｷｬｰﾍﾙﾒｯﾄｻﾝｽﾃｷｰとごろごろしたり。

　あとは件の《彼女たち》も出てきます。いや、まったく出てこないのですが、間接的に登場します。こういったさじ加減（塩だけに）がものすごくうまいな、と改めて思いました。

　内容としては平和な幻想郷と塩のお話し。いつも通り――妖怪や人間や平和に暮らす幻想郷の世界の図。平和な人里。ちょっとした弾幕遊び。美味しい紅茶。最近は塩も安くなってきて、料理の幅が増えたり――
　と平和な図を延々と描き、けれどそれだけでは終わらない――だというのに読後感は悪くない、というヘルメットが直せませんさんお得意の短編でした。

　でも２１ｐのアレはもしかしたら遠大な皮肉かもしれない。どっとはらい。

　これは……エロい……
　いや一般向け本なのですが、表紙のパチュリーの、髪をいじる仕草とか、目線とか、唇とかが、妙に艶があって良いです。エロ可愛いです。エロス的です。そしてそれを羨ましそうに見ているパルスィ。ある！

　内容は、髪をいじる癖を「その癖似合わないぜ」と魔理沙から言われたことから、魔理沙を置いてひとり地底へもぐるパチュリー。けれどそこであったのは嫉妬狂いのパルスィで――というところから始まる、嫉妬とか弱さとか癖のお話し。

　なんだけどこう全体的にパチュリーがこうエロ可愛くて好き。武者プルーンさんが描くフルカラーの漫画というのはけっこう珍しい気もするのですが、髪の色が鮮やかに出ていて素敵だと思いました。
　表２部分の金色、紫色、金色で描かれたタイトルも良ござんした。ああパチェの髪をいじりたい。

　叱られて追い出された布都ちゃんが、妖夢のもとへと駆けこむお話し。
　妖夢と布都ちゃんって、どこか似ていると思うんですよ。一生懸命で、主大好きで、ちょっとへっぽこで、でも真面目なところは真面目に締めるたり。そんな二人のやりとりを蒼空市場さんはよく描いてくれるので大好きです。

　布都ちゃんと妖夢のお話し。

　一生懸命すぎて周りが見えていない布都ちゃんに対して、妖夢がどうにかこうにか（幽々子の助力を借りずに）相談に乗ってあげようとする、二人ともが一生懸命で、二人三脚しながら答えを探すようなお話です。

　そんな二人のやりとりが小気味よく、また可愛らしい本でした。そして落ちに吹く。
　ところでこの布都ちゃんはちゃんと下着をはいているんでしょうか（既刊を思い出しながら）

　境界を越えた先で、女同士ちゅっちゅするところを見てしまったメリーさん。
　それ以降、プリンを食べたりする蓮子の唇をつい見てしまい……というところから始まり、「なぜ女同士でちゅっちゅするのか？」という真面目な会話を踏まえつつ、やがてちゅっちゅに至る、秘封倶楽部でちゅっちゅな本です。

　蓮メリちゅっちゅ！蓮メリちゅっちゅをしよう！

　本全体から漂う「あー蓮子とちゅっちゅしたいよう……でも恥ずかしい……でもちゅっちゅしたい……」という雰囲気がたまらなく良いです。ちゅっちゅしたい。
　誰だって蓮メリちゅっちゅしたい。私だって蓮メリちゅっちゅしたい。そして世界は蓮メリちゅっちゅに包まれた。ハッピーエンド。

　……いやもうちょっとこう真面目な感じもあるのですが、夢を現実にするように、ちゅっちゅを現実のものにしよう！という幸せな本でした。

　余談ですが後書きがレンメリチュッチュで染まっていて素敵だと思います。いいですよねこう頭が病気な感じにレンメリチュッチュなコメンタリー！　レンメリチュッチュはこうして人から人に感染していくのだなあと思いました。おわり。はっぴえーんど。

　装丁がかーわーいーいー！
　レースの丸カット＋遊び紙という、誓いの言葉を交わす本にはぴったりな装丁が大好きです。なにげに表紙２−３印刷されているし、こう、可愛い本っていいよね……いい……と思わずにはいられない本。

　内容ももちろん可愛いです。

　博麗神社へと訪れた、奇妙な参拝客。その夫婦を見ている霊夢と魔理沙は、二人ともがふと思うのです。
　自分たちは、いつか、どうなってしまうのだろう。
　自分たちは、いつまでここにいられるのだろう。
　自分たちは、どうして――
　という悩みに対して、互いがほんの少し歩み寄るような、言葉を触れ合わせるような優しいお話しでした。
　この本の最後で提示されている台詞は自分の大好きなものなので、ああいいなあ、ともだえながら読み終えました。ありがとうです。

　そして身長差ちゅっちゅいいよね……!!（踏み台見ながら）

　妹紅の飼っていた犬が、死んだ。

　そして犬を埋めながら泣く妹紅を、輝夜はじっと見ていた……というところから始まる、永遠を生きる少女同士でしか通じ合えない言葉の触れあいのお話し。
　永遠を生きるということ。
　全てのものが、彼女たちを置き去りに去ってゆくということ。
　ただ見送ることしかできない――にもかかわらず、見送るたびに、妹紅はなく……という感傷のお話しでもあります。

　こぼれる涙が素敵で、溢れる想いが素敵な、妹紅と輝夜の本。

　永遠を生きる妹紅が大切なものと一緒に埋めた涙が、いつか地球の全てを覆うのならば、それは優しいことなのか哀しいことなのだろうか……とつらつらと考えてしまうのでした。
　良いな。

　ラストの二人の会話と、本編中の妹紅の台詞を考えるに、この話の時系列ってたぶん……とか考え始めると、余計に切なく、泣きたくなる本でした。

　間の抜けた星ちゃんとぽんこつな布都ちゃんにおけるギャグコメ本です。
　どっちも可愛い。というかお互いの保護者まで含めて可愛い。
　星ちゃんも布都ちゃんもどっちも真剣に宗教戦争やっているのにどこか締まらない――というところが余計に可愛かったです。まあでも実際布都ちゃんの当たり面積（船）とかアレとかアレとか考えると……うん……本編からして……

　布都ちゃん可愛い！

　締まらないことは締まらないんだけれど、締めるところは締めるのが、同時に魅力だとも思うのでした。ギャップ萌え。ギャップ萌えかコレ！

　それはそうとスパッツ布都ちゃんかくならドロワ布都ちゃんもかいてください!!

　とてもではないが良い仙人とは言い難い、むしろ都を傾かせるタイプの仙女であるところの青娥。事実彼女は、権力のある男に寄り添い、ゆるやかに国が傾いていくのを見て楽しんでいた。
　けれどそんなある日、宮古という世話役の少女を貰い……というところから始まる過去話。

　良いです。
　何が良いって、えぐさが良い。動的な盛り上がりがあるわけではなく淡々としているのだけれど、それは水底の静かさで、全体を通してある薄暗く重い雰囲気が発するえぐさがとても良いです。
　このえぐさと、それと寄り添うようにしてあるある種の綺麗さがここのサークルさんの（綺麗な話のときの）魅力だよなー、と思いながら読み終えました。読後感が素敵。

　ふすま喫茶さんサイドのお話しは、「珍しいものを手に入れた香霖のもとに、魔理沙がおねだりにゆく」というお話し。
　鏡とは本来宗教的なものであり、万華鏡とは過去や未来を覗くためのアイテムなのだ――という理論を持つ香霖が、魔理沙の過去と未来を覗きこんでしまうお話しです。

　魔理沙ちゃん・カワイイ。

　いつもの弾幕遊び風の衣装ではなく、どこか普段着かつおしゃれ着っぽい衣装が可愛いです。リボンがチェックで可愛らしいよねコレ……
　そしてオチが、香霖らしく、また魔理沙らしくて好きなのでした。

　ヘルメットさんサイドのお話しは、紅魔館の舞踏会に招かれる魔理沙のお話し。
　香霖が褒めてくれた、という理由だけで白いドレスではなく＜外＞の衣装を着ていく魔理沙。でもそれは可愛いことは可愛いものの、舞踏会には不釣り合いで……
　というシンデレラストーリー。でも彼女は待っているだけのシンデレラではなく魔法使いなのでした、という、小気味のいい物語です。
　そして色々着せ替えさせられる魔理沙ちゃんが超可愛いのでした。あとこれたぶん穿いてませんよね！！！！！

　そんな、少女たちのお話しでした。
　…………そして会場おまけペーパーが、その、ひどい…………笑いしかでないけどひどい…………（褒め言葉）

　星蓮船・アフターストーリーです。
　星蓮船の異変のあと、白蓮が使ったスペルカード「スターメイルシュトロム」にあこがれて弟子入りしにいく魔理沙。二人の魔法使いの相性は意外と良く、しばらくは仲睦まじい日が続きました。
　白蓮にとって、魔理沙は手のかかる娘のようで。
　魔理沙にとって、白蓮は師か母のようで。

　――だからこそ、霧雨魔理沙は、思い出さずにはいられない。捨ててしまった、遠い過去のことを。

　という、白蓮を通して魔理沙が過去を振り返るようなお話しでした。二人の魔法使いの交流がすごいほんわかして、そしてそれがあまりにも楽しそうだからこそ、魔理沙の苦悩に胸が痛む……という素敵な本。
　せつなさがたまらなく良いです。

　そしてそれを台無しにする後書きオチに爆笑する。明るさと暗さの配分が良い塩梅な本です。

　映姫さま・可愛い・アトモスフィア。
　いつもの夢のチョモラン王国さんに比べると、全体的にコメディちっくというか、キャラクタの可愛さプッシュなところがあります。その一方でシリアスな部分を締めるところは締めていて、そのふたつが心地よく絡まって良い読後感でした。

　ミニスカ・映姫様・カワイイ。もぞもぞしているおてて可愛い。ご飯食べながら照れているところも可愛い。ちんしゃぶしてほしい。映姫さまとても可愛い。
　でも稗田の少女もちょう可愛い。

　なんというか、「閻魔様」「御阿礼」という立場ではなく、その基にある二人の少女が触れあう話。ただの少女として――と立場を全て捨てることなどできないけれど、それでも少女として、会話を交わし、ふれあい、交流するお話しでした。

　花粉を吸って興奮する、ただし姉妹キャラ限定な、姉妹百合のお話し。
　リアル花粉症で「花粉とか滅べよ……」とか思っている勢力ですが、こんな花粉だったらいっぱいあるといいね！！と思いつつも花粉と一緒にレミフラ姉妹とかください。

　ところで裏面がフランのレミフラ抱き枕はまだでしょうか。

　あと首輪つけてるこいしちゃんが可愛かったのでペットにしたいです。心の目の紐が絡みついているのがいいですよねコレ。
　

　いーいーなーいーいーなー、こういうのいいなー、という本。
　UnPreさんの本で魅力的なのは少女たちのやりとりとそこに存在する彼女たちの表情だと思います。照れてる咲夜さんとか特異ぶってるアリスとか興味津津な魔理沙とか笑ってる魔理沙とか泣きそうな魔理沙とか魔理沙とか魔理沙とか。
　とそんなことを思いながらいつも本を読んでいたので、作中のパチュリーに凄く共感できてしまうのでした。だって、ねえ、うん。魔理沙可愛いし。でも魔理沙を可愛いと思うパチュリーも可愛くて、読み終わったあとに悶えるのでした。

　魔女たちのお話し。

　ヒトを捨てて魔女になったもの、ヒトを捨てることなく魔法を追い求めているもの。その違いや、だからこそ相手に抱く想いが作中で描かれていました。今回はパチュリーとアリスに視点が絞られていましたが、果たしてアリスは何を想っているのだろうなーと気になったり。
　錬丹術設定を拾い上げた本は確かにあまり見なかったので、新鮮な感じでした。

　幼い魔理沙ちゃん可愛い！
　過去モノを読むたびに思うのですが、幼い頃の魔理沙ちゃんを見れるだけでなんというかもう過去編万歳という気になるのは自分だけでしょうか。大人と子供の間を揺れ動く少女な魔理沙は可愛いけれど、まだ恋を知らなかった子供が少女になろうとする幼い魔理沙もまたスゴクカワイイ……

　というわけで、恋という感情のお話しです。

　恋、と一口で言ってしまうと物凄く簡単なようですが、その内実は結構細やかで、単純な恋愛から、あるいはもっと広義の意味での感情まで含まれていて――果たして幼い頃の魔理沙が抱いた＜恋＞とは何だったのか。そして、幼い頃に出会った少女とは……というおはなしでした。

　魔理沙ちゃんロリロリ可愛い。

　わかれ！正体わかれ！見たまんまだろうが！と思わなくもないですが、しかし恋は盲目なんだろうし、霊夢はちゃんと気づいてるあたりがなんというか霊夢と魔理沙らしくてほほえましく思いました。

　個人的悶えポイントは霊夢のスカートの中のフリルです。ひとひらさんそんなところばっかりみている……でもみずにはいられない……

　あ、あとエプロン魔理沙ちゃんカワイイ。
　公式魔理沙ちゃんのＭマークのときも思ったけれど、胸のハートマークとか自分で選んで入れたんだろうか……とか考え始めると魔理沙ちゃん可愛いですね。可愛いとしかいってないなこの感想。
　個人的には表紙紙が好きです。夜の雰囲気に似合っている。

　表紙の装丁が素敵です。
　タイトルの「廻る世界と君と君」という文字（プラス星の模様）が金色の箔押しされているのですが、夜空から落ちてくるそれらを受け止めようとする魔理沙――という装丁を含めた構図がなんとも素敵でした。
　こういうのいいよねー。
　それプラス、めくったら見開きで満天の星空――という二重演出が今から始まる物語を予感させて悶えるのでした。見開きは贅沢だけどうまくつかったらすっごい素敵なので好き。

　きらきらと廻る世界のお話し。

　内容としては、まだ空を飛ぶこともできなかった魔理沙が、香霖に紹介されて＜空を飛ぶ少女＞のところへとゆくお話しです。魔理沙は純粋な憧れで接するけれど、＜空を飛ぶ少女＞は、そんな魔理沙に告げます。

　――石を投げられるわよ。人は理解できないことを怖れるから。

　その言葉に対し、魔理沙は――というのが物語のキモです。
　多数派か、少数派か。こちら側か、向こう側か。空を飛ぶか、飛ばないか。
　果たして魔理沙はどちらを選ぶのか。彼女は、どんな世界を選び、形作っていくのか。そんな魔理沙のお話しであり、香霖のお話しであり、霊夢のお話しでもあります。

　思想が綺麗。

　作中で描かれている魔理沙の思想が、それこそ夜の星みたいで綺麗でした。読んでいてすっと胸に落ちてくるような物語です。
　地面に寝転がって満天の星空をずーっと見上げていたら、きらきらと輝きながら星がゆっくり動いていて、自分を中心に夜が廻っているような――でも地面に寝っ転がるだけじゃなくて、もし、満天の星を空に浮いて見られたら、さぞかし綺麗だろうなあと想うのでした。
　そんなおはなし。

　あとは最後のシーンで描かれる魔理沙の素直な感情と、一方どこか諦観を含む香霖の思考の流れが好き。魔理沙はそのときがきたらどんな反応をするんだろう――とか、何げなく言ったその言葉がどんな意味を持つのか魔理沙はいつか考えざるを得ないのだろうかとか、色々妄想できて死にます。こーまりもいいなあ……！

　自分と不釣り合いなほど大きい（というか魔理沙がちっちゃいんだけど）箒をもってきょろきょろしている魔理沙ちゃんは実際カワイイ。あと魔理沙ちゃんしょっちゅう大口開けたりかといったらうつむいて沈んだりと表情カワイイ。

　素敵でした。
　赤色バニラさんの本を追いかけている方は重々承知かと思いますが、赤色バニラさんには大きく分けて二種類の本があります。サイコパス気味な魔理沙や早苗が繰り広げられるシュールなギャグモノを描く頭のおかしな赤色バニラか、どこかせつない綺麗な赤色バニラか。

　今回は後者でした。

　即ち綺麗な赤色バニラ――なんですが、正直意表をつかれました。表紙とタイトル、それからサンプルを読んだときに「きっとこんな話だろう」と考えていたものが、見事に外されました。まさかこんな話だとは……！
　ずるい赤色バニラずるい。読み終わったあとに床をごろごろと転がって声なく叫びだしたくなるずるさ。ああ魔理沙可愛いなあ……!!

　これに関しては内容に一切触れないで読んで欲しい感じではあります。そのほうがきっと楽しい気が。
　ただ霊夢のことを『あいつはムカデに咬まれても泣かない女だ』と大ゴマで言い切る魔理沙は赤色バニラ全開だと思いました。大ゴマで自信満面に言うあたりが。あとくつろぐというか強盗よねもう……うん……でも魔理沙可愛い。

　でも本当に可愛いのは霊夢かもしれません。何この可愛い……本当に可愛い……

　あ、あと表紙の特殊装丁が素敵でした。
　霊夢が流している涙の部分をピンポイントでニス盛りしてあって、触ったときの感触がなんともいえず素敵。こういう使い方は羨ましいなーと思いました。
　でもまっさきに思いついたのが「某さんがお漏らし本で同じことしないかなー」だったのでもう駄目かも知れません。

　ネコネコカワイイー。
　そんな「神社生活＋ねこ」は猫が可愛くて女の子たちが可愛くてたまらなくなるおはなしです。
　駄菓子屋のおばあちゃんから子猫を譲り受けた博麗霊夢。人や人ならざるものたちが集まる賑やかな博麗神社に、また一匹家族が増えました――という日常本。ねこという新しい家族が加わって、春を迎え、夏を過ぎ、秋を越えて、やがて冬に至る彼女たちの一年を優しく描いた本でした。

　猫が可愛い。

　博麗神社の猫はお酒の匂いが嫌いだそうですが、うちのところの猫は宴会終わったあとにだらだらしてると寄ってきて人の膝の上で丸くなるんですよ可愛いでしょう！と思わず猫話をしたくなる感じですが、世の猫好きはおしなべてそんなものです。ねこねこ可愛い。携帯の待ち受けは猫写真です。
　猫のことしか話してないので作品のことも話すと、あくまでも猫を通した幻想郷の少女たちの日常――ということで、主に博麗神社を中心とした彼女たちの何げない、特別でない生活が描かれます。
　和む。
　そもそも魔理沙が猫っぽいよね……というか猫そのものだよね……とか思いながら読んでいましたが、冬が近づくにつれ、どこか寂しさを漂わせる霊夢。その視線の先には紫がいて――と、幻想郷での彼女たちの在り方を改めて考えてることに。
　その一方で、けれども冬の寒い中でも賑やかさはあって、ああ幻想郷にいきたいなあ猫もふりたいなあ、と思うのでした。
　猫好きな人にお勧め、そうでないけど東方の少女たちが好きな方にもお勧めな一冊。

　ヘルメットが直せませんさんの本は、こう、アリスの本を読んだときにも想いましたが、雨上がりな雰囲気があると思います。暗く重いんだけど、それが晴れ切ったときの爽やかさもあって、けれど空気にどこか雨の匂いが残っている――「風祝・東風谷早苗１Ｘ年のキセキ」も、そんな、雨と雨上がりのようなお話です。

　東風谷早苗の物語。

「病院の窓に向かって、誰にも見えないナニカを見てぶつぶつ呟く早苗」というところから始まるこの本は、東方風神録の過去話です。
　幻想郷の外、現代にいたころのお話し。
　神様が見えてしまう少女のお話し。
　奇跡も神様もないような世界で、それでもそれが＜ある＞のだと知ってしまっている少女の物語。
　知ってしまっているが故に普通ではいられず、かといって完全に幻想のものでもいられずに、境界線の上で生きるしかない――というアンバランスな危うさを描きつつも、その一方で＜少女としての東風谷早苗＞の苦悩も描いているのは流石だなーと思いました。
　普通このあたりどっちかに偏りがちなのですが、このバランス感覚がヘルメット本だなという気がしないでもないです。

　巫女としての早苗。
　少女としての早苗。

　風祝としてのアクセサリーをつけながらも制服を着ている表紙の早苗が、それを体現しているような気がします。フトマユカワイイー。でもこれくらいでふと眉っていったらフトマユスキーに怒られる気がしないでもないです。

　けねもこらぶ。
　いやもこけねかもしれないけれど、慧音と妹紅の関係性はとても好きです。輝夜と妹紅の共犯者めいた関係性も大好きなのだけれど、その一方で、「永遠を得てしまい人の営みから外れてしまった人間、妹紅」と、「人里で生きながらも人ではなく、妖でないから永遠を生きることもない少女、輝夜」という、この二人の関係性は物凄くツボです。
　そこにある感情は、何なのか。
　同情なのか。依存なのか。愛情なのか。贖罪なのか。それとも――
　という、妹紅と慧音の関係性についてのお話しでした。関係性いいよね……いい……凄くいい……

　お話しとしては、「ある日竹林に住まう虚ろな妹紅と出会った慧音。彼女の正体は、蓬莱の薬によって永遠を得た人間だった――」というところから始まる、慧音と妹紅の出会いのおはなしです。
　二人は出会い、たびたび出会い、月日の数だけ親しくなっていく。
　けれど二人の間には、たったひとつ、どうしようもない嘘があって――というのがこの物語です。

「うそつきのけもの」というタイトルからして好きなのですが、果たして誰が嘘をついていて、何のためについていて、そしてついた嘘は何なのか――というのを考えていると悶え転がります。
　後書きにも書いてあるけれど、この「嘘」というのが作品のキモで、そのあたりは読んだ方の好き好きに捉えてもらえれば。
　ただ、嘘って言ってしまうと悪いイメージがなくもないけれど、決してそれだけではない――とも思うのでした。相手を想う、というか。優しくも臆病な獣の嘘かもしれないけれど、相手を想っていることは嘘じゃないよね……けねもこいいよね……いい……

　あとチョイ役だけど輝夜さん超カワイイ。この胡散臭さがなんともいえず素敵。　

　トーレーペー！！（思うところが色々あるそうです）。
　まず真っ先に目を引くのが、この『仮面の下』、半透明紙が表紙に用いられているということ。遊び紙にカラーで描かれた幽々子様を覆い隠すように（あるいは仮面のように）、半透明紙に描かれた美しい花々があって……ああ……透明紙良いなあ……
　というかその下をめくったら更に花柄和紙の遊び紙が入っていて、どこまで贅沢なんだ素敵すぎると悶える本でした。この良さは是非手にとって確かめて下さい。超お勧め。超部屋に飾りたい。

　内容ですが、妖々夢以前の白玉楼でのお話し。「満開の桜の下には、怖ろしい鬼が潜んでいる」――けれど妖夢にとっては、鬼よりも桜のほうがずっと怖ろしかった。その理由について妖夢は考えないようにしていたが、やがてその理由を自覚してしまう……という、「怖ろしいもの」についての咄です。

　ホラーというよりは、美しくも怖ろしい、幻想小説じみた短編です。

　かつては人であった少女・幽々子と、半分は人であった少女・妖夢のお話し。どちらも遠めに見るには美しい少女でしかないけれど、その人の姿の下、仮面の下には果たして怖ろしい何かが潜んでいるものか。

　花と鬼のお話し。

　花の面の下には何が埋まっているのか、というお話でもあるのか。綺麗な本でした。ラストの蝶二羽が良いなー。

　布都ちゃん可愛い！
　表紙からして布都ちゃんの布都もも（太もも）がむき出しで目が眩しいのですが、本編でも布都ちゃんの布都ももがあっちにこっちに行き来していて悶え死ぬかと思いました。布都ちゃん可愛い。
　布都ちゃんは基本的に真面目なんだけどけっこう抜けてるのにドヤ顔するから、くるくると変わる表情が魅力的だと思います。特に今回の蒼さんの本では、「初めて人里へと行く」というお話しのため、知らないもの、知らない人との出会いに好奇心に目を輝かせているのが何ともいえず可愛かったです。

　可愛いとしか言ってないネ。

　内容としては、布都ちゃんが人里の調査に出かけ、そこで廻りあった妖夢とあちこちを廻る――という人里探索ものです。お互いが、お互いの出会いから何か大切なものを得る、という王道パターンがとても心地よかったです。

　そして所々にある小ネタがツボ。

　ダ○の大冒険あたりはメジャーだと思うんだけど、七つの海を荒らしまわったブルーサンダーは何というかガンガン組にとっては直撃。ハー○ル、ハー○ルじゃないか！と思わず本を読みながら突っ込んでました。

　なおオチが蒼空市場的に珍しい感じでしたが、ベネの一言。布都ちゃんマジ可愛いわ……

　騙す。
　というと一概に悪いイメージがあるし、「人をだましてはいけません」という謹厳もあるのだけれど、同時に「騙されるやつが悪い」という言葉があるように、人間であるかぎりは＜騙す＞という行為からきっと離れることはできないのでしょう。
　ならばこそ、誰かを騙す人間を、騙す妖怪がいたとしてもいい――この本は、そんな人間と妖怪の騙し合いな物語です。

　妖怪と人間。

　この組み合わせだと、普通は妖怪はその人ならざる力を使って人間と向き合う……となるのですが、マミゾウさんの場合は一味違って、彼女はあくまでも騙すだけです。それも能力を使って派手にではなく、口先三寸で騙し通す。
　それは彼女が（後書きで語られるように）、人の社会に溶け込んで生きているからこそなのだ――と読み終わったときに終わりました。
　人間味があるけれど、人間じゃない。情があるけれど冷酷でもある。それはまるで人間のようでもあって、彼女が人の中で生きているところをありありと想像できました。

　もしかしたらこの愉快な妖怪はアナタの街にもいるかもしれない、なんて。

　基本的にマミゾウさんが＜粋＞の一文字で、読んでいてすかっとする感じでした。あとルーミアエロい。超エロい。そして騙されたい。

　布都ちゃん可愛い！
　の一言で全部済ませていい気がするくらいに布都ちゃん可愛い本です。可愛過ぎてレイプしたい。いやでもレイプしたら布都ちゃん泣いちゃうだろうから強制和姦でひとつ。そんな感じの布都ちゃん本です。

　微エロコメディ。

　レイパー、という単語が入っていますが、ガチエロや鬱というわけではなく、「蘇ったばっかりのせいで、レイプが何かも知らない布都ちゃんが知ったかぶって早苗に『レイプしよう！』ともちかけちゃって……」というコメディ本です。

　表紙の「？」マークと、後ろの邪悪な二人が全てを物語っているともいう。

　全体を通して言えるのは、布都ちゃんが可愛いということでえす。それしか言ってないねコレ！　なんというか大統領さんの布都ちゃんは思わずレイプしたくなる可愛さがあっていいと思います。
　あとこの本でいちばん酷いのは、セッ○スに伏字が入っているのにレイプには伏字がないところだと思います。つまりセッ○スは隠語だけどレイプは一般用語！布都ちゃんレイプは合法！合法ですよプロデューサーさん！

　あと裏表紙の布都ちゃんのハイライトが消えているのがいいですね。
　瞳をきらきらさせて無知ックスしてくる布都ちゃんも可愛いけどハイライト消えてがくがくしてる布都ちゃんも可愛い。

　ところで布都ちゃんレイプ券はどこへいったら買えるでしょうか。

　布都ちゃん可愛い！！！！！！！！！！
　本気で今回これしか言ってない気がしますが、だって布都ちゃんが可愛いのがいけないんだよ……！表紙からそんなに布都ももを見せて誘惑しやがって……！！！　と脳がただれたことを言いだすほどに可愛い布都ちゃん本。
　ギロチン銀座さんの布都ちゃんは、エロ可愛いです。無知ックスしたくなる感じです。何も知らない布都ちゃんをどす黒い欲望で汚して泣かせたい……！！！！と何だかダメなアレがだだもれになる可愛さ。

　なお、KENZEN本です。

　一般向けではあるのですが、「手を縛り、目隠しし、何をされているのかわからない布都ちゃんにイタズラをする」というコンセプトからしてぶっちぎりグレイズゾーンですが、実際グレイズです。可愛い。
　あきらかに何をやっているのかわかっててやってるせーがにゃんにゃんと、なんとなくえっちーことだとわかりつつもよくわかってなくてのせられる布都ちゃんの対比がヒドイカワイイ。
　太子様は知ってて放置するので、結局蘇我様がわりをくうのでした。ああでも可愛い。布都ちゃん可愛い。ああでも真に可愛いのはとじこかもしれない……

　いい笑顔だった……！

　全裸本です。
「！？」という感じですが、全裸本としか言いようがないくらいに全裸本です。神霊廟本編で霊夢に負けた後、身ぐるみはがれた太子様が、全裸（厳密には葉っぱ三枚）のまま放りだされてしまって……！　というお話しです。

　あまりに不憫。だけど可愛い。むしろだからKAWAII。

　文字通り裸一貫となって人里を練り歩き、恥ずかしがりつつも霊夢への逆襲手段を探す太子様の姿には涙と興奮を禁じ得ませんでした。でも目の前に葉っぱ三枚の人が現れたら逃げるかなあ……

　連作四コマですが、全体的に明るくテンポが良くて、一つの話ごとにくすりと笑いながらきちんとオチにつながってゆく――という読み進めて楽しい本でした。全裸太子様可愛い。あと貧乳と巨乳の差がすごい。

　そして全裸とは思えない素敵なオチが良かったです。家族っていいものだな……！　この場合は豪族ですが。

　神の山、特訓をしていた早苗と文の流れ弾で、家ごと魔法の森（inアリスの家）に吹き飛ばされた秋姉妹。神様なのに……神様なのに！　そんな二人のストライキが今、ここに始まる！

　そんな芋を食べる話です。

　肩の力を抜いてリラックスして紅茶呑みつつ芋を食べながら読める本です。どうなんだ最後のソレ、と思う人はスイートポテトを用意しよう（作中の幽香さんは芋をもりもり食べております）。
　食べるおはなし。
　秋姉妹ストライキなお話しなため、秋姉妹とアリスがメインに来ているのですが、影で活躍している幽香さんが可愛いです。というか今回（アリスが傍にいるためか）基本的に肩の力が抜けていて、クッキーは食べるは鍋は食べるわ芋は食べるわと、超リラックスして幽香さん食べまくってます。
　KAWAII。
　深刻さがいっさいなく楽しんでる幽香と、真剣な秋姉妹と、翻弄されるアリス――という組み合わせが読んでいて楽しかったです。あと食事シーンが多いので、そういうあまり描かれない部分が描かれていて素敵。
　背が低くて椅子にうまく座れずクッションを貸してもらう――といった、細かい部分の演出がツボ。ああ確かになあ……！

　おまけ本の幽アリも含め、そういった些細な……そして彼女たちの日常な部分がとても可愛かったのでした。素敵な本です。

　そして珍しいタッグでのシリアスバトルは一見の楽しさあり。オチも含めて、綺麗な流れが良かったです。

「聖徳道士……豊聡耳神子を討ち取りたいと思います」。
　そんな衝撃的な青娥から始まるこの漫画は、基本的に腹のさぐりあいです。明らかにあやしくて裏に何かたくらんでいそうな青娥と、騙すことにかけては右に出るのを許さないマミゾウ。
　お互いがお互いを「こいつは信用ならん」と思い、「絶対に裏をかいてやる」と思いながらも手を組む――という、読んでいて楽しい構造でした。

　果たしてどっちのほうが腹黒いのか！？騙されるのはどっちだ！？　という、騙し合いなのにどこか明るく、重苦しさのないうきうきとする本。登場する人物たちの軽快なやりとりと、二転三転する物語がツボです。

　　＼お前はここで終わりだがな／

　それが果たしてどういう結末を迎えるのかは、読んでお楽しみ――ですが読み終わって楽しかったことは確かでした。ああ騙されたい。
　なお超長いタイトルですが、今回の作品のメインをはる登場人物たちのスペカ繋ぎ合わせになっています。こういうのは面白い。そしてよくよく読むと……（笑）

　あけましておめでとうございます！
　一週間ほど遅い気もしますが、ほんとは年が変わるまえに感想を書きたかった――そんなビビットグレーさんの年越し本です。
　一年の最後ということで神社に集まる少女たち。射命丸が提案したのは、里の人たちと共同で年越し合わせの炊き出しをするというものでした。当然白羽の矢が立ったのは、人にも妖怪にも顔が広い慧音先生。

　一方慧音からお使いを頼まれていた妹紅は、＜一年にお世話になった人＞たちのもとに顔を出すことに。ところが帰ってきたときには慧音はおらず、慧音の姿を探して妹紅は幻想中を歩くことに――
　という、結果的にも＜一年にお世話になった人たち＞に逢う妹紅のお話し。

　遠い昔……永遠の命を得る前……から知っていたもの。あるいは、この短い時間の中で出逢ったもの。そんな人たちと話す妹紅は、変わることがないのか、それとも何かが変わったのか。
　この一年間、誰と出会い、どんなふうに過ごしたか――そんなことを、読み終わったあとについ考えてしまう素敵な本でした。大晦日は一年を振り返る年で、だからこそ、大切な人と過ごしたい。もこけねらぶ。

　今年もありがとう。
　来年もよろしく。

　そんな当たり前の言葉が、とても大切だな、と読んでいて心温かくなりました。最近寒いしネ。

　道教の修業に励む自機組のところへ青娥が廻りつつ、「どこかへと失くしてしまったカンザシを探す」という、神霊廟プチ後日談的なお話しです。
　青娥のカンザシは、穴を開けることに特化した鑿（ノミ）。朝からそれが見つからず、あちこちを青娥は見て廻るが……という流れのため、霊夢、魔理沙、妖夢、早苗の各人の様子が描かれていて可愛かったです。

　いわゆる「そういう」本ではないのですが、３ｐ目の寝起き青娥とか、どこか淫靡な感じが漂っているのが素敵だと思います。仙人えっち。

　あと物凄いメタな発言になりますが、開幕早々いきなり厠に入ってしーしーしている霊夢なのは完全に作者さんの趣味だと思います。絶対ここ趣味で入れたというか描いている最中はさぞ楽しかったに違いない……！（詳しくはいままでのみずたたきさんの本参照）。霊夢ちゃんのドロワずりおろしてぺろぺろしたい。

　まあきっと、倫理に孔を開けるからに違いないのです。だだもれ。

　素敵な本でした。
　何が素敵って、本そのものも素敵なのですが、今回高虎さんと沙田さんの合作――という素敵なタッグで読めたのが何よりも素敵でした。原作ネームが沙田さん、作画が高虎さん。なんというか素敵度数が二倍どころか二乗な本で読んでいて幸せになったのですが、ふと思ったことが。
　タッグになったことで、沙田さんと高虎さんの個性が、逆にはっきりと浮き彫りになった気が。
　そんなわけで、『花嵐』の感想を踏まえつつ、沙田さんという作家はどういうものを描いているのだろう――という感想兼考察が今回のキモです。ちょっと長いしネタバレだらけなのでご注意をば。


　まず冒頭に挿入されているのは、于武陵の『勧酒』という漢詩。
　超意訳すると、「君に黄金の盃を勧めよう、並々と酒を注がせておくれ。花が咲けば嵐が来るように、人生には別れがつきものなのだから」という、花が散るように別れが来るのだから宴会しようぜ、という感じの漢詩です。
（作中で幽香が口ずさんでいるのは、井伏鱒二さんの訳です）

　別れ。

　この本は幻想郷が滅亡した後のお話しなのだけれど、「どうして滅亡したのか」という原因については触れられていません。後書きにおいては、「読み手のビジョンにお任せする」とありますが、漢詩部分を踏まえるとなんとなく納得できます。
　花が咲けば、嵐が来る。
　人生に別離はつきものだ。
　だからこの別れは当たり前のもので――そのことについて考えるのではなく、そうだからこそ酒を飲み明かそうではないか、という引用された漢詩こそが、彼女たちの在り方を指し示しているような気がします。
　まあそういったアレコレ置いといても、彼岸花を黒と白のレースでむすんじゃう、という発想が突きぬけてていったい頭の中に何があるのだろうなあと思うばかりですが。

　ちなみにラストで引用されているのは、寺山修司さんの「さすらいの途上だったら」と「幸福が遠すぎたら」だとか。そのことについてどう思うかは、読んだ人次第な気がします。
　あるいはこの本そのものが……というか同人誌というものが……ないしは総ての本が……ある意味においては出会いと別れそのものなのかもしれませんが。即売会は宴会だしネ。

　そんなわけで、『花嵐〜Kwaran〜』を読んで気づいたこと。

　沙田さんネーム、高虎さん作画、という合体本になったことで、普段本を読んでいても気づかないことが、ふと頭に浮かんできました。せっかくなので、沙田さんがコミティアで出された本を紹介しながら考察していくことにしたのでした。

　沙田さんと高虎さんの、描き方で異なる点は、一つは＜視線＞です。

　沙田さんのキャラは誰がどういった意図でどこを見ているのか、というのが物凄くはっきりしていて、正面顔というのは意外と少ないのです。「花嵐」において、幽香は映姫を見ているし、映姫は幽香を見ている。一コマに一キャラしかいないときは、横顔や斜め顔（どこかを見ている顔）というのがほとんどです。

　そして数少ない正面顔が出てくるのは、物語の終盤／主人公と向かい合う相手キャラの正面顔で、主人公をまっすぐに見据えて、重要なことを語るシーンです。なぜかというと、そうすることで「その誰かが、まるで本を読んでいる私たちに向かって話しかけている」ように感じられることで、主人公（語り手）への感情移入が物凄く効果的になるからです。

　その作画効果が最も効果的に使われているのが、『流人の島』というオリジナル本。

「罪人が流される島に、五人の男が流される。男たちは島人を襲い逃げることを画策するが、罪人のひとりである長吉は島人を裏切ることができず――」という物語。その作中において、正面顔がはっきりと描かれるのは数少ないのですが、その中でも最も印象的だったのは、罪人のリーダーの男が「お前は元々、こちらがわの人間なんだよ」と告げるシーン。
　超どきっとしました。この真っ直ぐに見詰められた瞳に告げられた瞬間、＜お前＞とは長吉であると同時に、読み手である私自身にもなったからです。そうして長吉に感情移入しながら読み進めることで、ラストの印象がよりいっそう深いものになるのでした。

　逆にオリジナル本『明神様の赤い旗』では、「見ない」ということが強い意味を持ちます。「年に一度現れる明神様を、決して見てはいけない」というお話しで、なぜ見てはいけないのか――ということが話の筋になった短編です。
　見るということ。
　見るということは認識することであり、意識的に見ることによって初めて＜共同体に招き入れる＞ことでもあります。見えないものは、受け入れることができない。見てしまえば、受け入れざるを得ない。あるいは向こう側に連れていかれてしまう。
　だからこそ見てはいけないとされた神様は、「神話の世界でいまもたったひとり孤独に戦っている」のです。
　でも。
　作中で描かれているように、見ないから、見えないからといって、いないわけじゃない。見なかったとしても、味方でいてもいい。見えなくても、それは、そこにあるのだと、沙田さんの作品は描きます。


　――見えないだけで、幻想の郷は、どこかにあるのかもしれない。


　沙田さんの方は、私たちのすぐ傍にありながらも、境界線を隔てていて《見えない、けれど在る》何かを描こうとしているように思えます。
　見えないものを――見えないからこそ――見ようとする、意思の動き。
　それはやはり＜こちら側＞であり、＜向こう側＞に立てないからこそ、＜こちら側から向こう側を見ようとする＞描き方です。東方本は基本的に舞台が＜向こう側＞だから意識しませんでしたが、オリジナル本の場合（特に島という、海という向こう側が描かれた作品だからこそ）その点が強く描かれているように感じました。

　見ること。見るものの視点、立ち位置。
　
　沙田さんの本は、基本的に貴種流離（偉い人が、元の立場を追いだされてさすらい、冒険を経て再び帰ってきて復権する、という日本古来からある物語のパターン）ではあるものの、「流れゆくもの」の視点ではなく、「流れくるものを見る／見送る」島人の視点で描かれています。
　それは氏が（インタビューなどで語っているように）島という出身地に起因しているのかもしれないし、あるいはもっと何か別の理由があるのかもしれません。その辺は研究者じゃないので追及はしませんが、ともあれ読者、私たちがいるこちら側から、沙田さんは一緒に向こう側を見ています。
　東方本においても構造的に（八雲藍の話が象徴的ですが）、「こちら」と「あちら（向こう）」をきっちりと線でわけて、そのどちら側に語り手が立つべきなのか真ん中で悩む――という創りが多くてだからこその「うつつの向こうのゆめ」というフレーズが登場したのだと思います。
　けれど。

　けれど、描かれる登場人物たちは、読み手にとっては紙の向こう側のものたちです。

　だからこそ氏の作品では、物語の最後で感情移入し同一感を得た主人公（語り手）が読者から離れていってしまうので、一抹の寂しさを含む読後感があると思うのでした。それは寂しいけれど素敵なことで、なぜかというと、ただの終わりではなくて、向こう側では向こう側で彼女にとっての物語が続くというからだと思います。
　向こう側には、世界がある。
　ただ見ることができないだけで。
　そしてその向こう側を、氏の作品はかいまのぞき見させてくれるのだ――というのが、DELI-TREの作品だと思うのでした。


　なお合作相手であるサークル「YAYUYO」さんですが、こちらは対照的に作者本人が《向こう側》に立っている作品です。この二人の視点の差は、『花嵐』のとあるシーンで象徴的に書かれていました。

『花嵐』の冒頭、幽香は彼岸花が咲く道をこちら側へと歩いて＜来る＞のですが、物語の最後の頁においては、幽香が向日葵の咲く道を＜去る＞ことが描かれているのがその証拠。花嵐は幽香の本ですが、その視点はあくまでも「幽香が訪れたのを見て、去ってゆくのを見送る」側で描かれています。

　また彼女が歩いてきた道が、＜来る＞ときは幽香にとってはアウェイな彼岸花の道で、＜去る＞ときは幽香の象徴である向日葵が咲いていることからも、訪れては去る幽香の在り方を象徴すると同時に、「冥界へと来て、生の世界へと旅立ってゆく」というお話しそのものをも象徴しています。

　視点で言うならば、高虎さんの本はキャラが作中内の誰かとかではなく、基本的に正面顔というか「こちら側」を見ているのが多くて、始めは読み手を見ているのかと思ってたんだけど、花嵐を読んで気づいた。これ多分、読み手じゃなくて、そこに居て／在って／生きてるキャラが、本を描いてる高虎さんを見てるのか。証拠も理屈もないけれど、氏の作品を読んでいるとそう感じずにはいられない何かがあります。

　世界を描く、という点で沙田さんと高虎さんはずば抜けていますが、その描き方はそんなふうに対照的です。

　沙田さんはこちら側に立って、視点の主である語り手に感情移入しつつ向こう側を描くけれど、高虎さんは向こう側に旅立って、まったく同一視できない/理解できないもの（代表的には幽香ちゃんとか。）を高虎さんの視点でそのまま描写する。
　高虎さんの幽香に感情移入するのはとても難しいけれど、だからこそ、あそこまで美しいんだと思う。美しい幽香がある、幽香の美しさというようなものはない。 あるがままに、あるものを描く。
　こんなにも対照的な二人の合作だからこそ、あの『花嵐』は不思議な魅力に満ちあふれているのだと思います。


　……と、長々と書いてきましたが、結論としてはYAYUYOの本もDELI-TREの本も面白いのでこれからも楽しみにしていますーと放り投げて〆るのでした。
　だってこれきっちりとした結論をだすまで書こうとしたらおわらな（ｒｙ

　………………神霊廟本楽しみにしてます！！！！！！！！