おお! ロー、ラー、グラウル なぜ泣く、 トゥラ、トゥラ。 ああ! ラッタ、タラルタ 聞いてください、 わたしの哀しみを。 盗びとこぞりて持ち去った、 あの人の宝に あの人の面影 約束した蓮の花は踏みしだかれて いまではわたしの手には何もありません。 おお! ロー、ラー、グラウル 泣くのはおやめ、 トゥラ、トゥラ。 いい事を教えてあげるから、お聞きなさい だれも知らない秘密を教えてあげるよ 宝物は失われて、 あの人の面影は去ってしまったけれど 約束した花の下には種が残っている。 あなたがその種を育てなさい 百年、千年経とうともいつかまた花は開くでしょう。 ――ただそれだけの、 あなたとわたしの秘密 おお! ロー、ラー、グラウル まだ泣いている、 トゥラ、トゥラ。 ああ! ラッタ、タラルタ ごめんなさい、 心配なの。 あなたとわたしとで縫い合わせた、 秘密の糸に 忍ばせた糸 約束した花を隠したこの布が だれかに暴かれてしまわないかを。 おお! ロー、ラー、グラウル 心配ご無用、 トゥラ、トゥラ。 秘密はだれも知らないから、安心なさい この隠し事は永久に土の下 布の中に睡る花を 地の住人たちがたとえ知りえても 彼らはみな梔子の花だから。 あなたは知らないふりをしつづけなさい。 その身が梔子の花になろうとも。 ――これもまた、 あなたとわたしとで隠した秘密 おお! ロー、ラー、グラウル また泣いている、 トゥラ、トゥラ。 ああ! ラッタ、タラルタ 助けてください、 困っているの。 どこを探しても見つからない、 あの花をのせる鉢と あの花を照らす洋灯(ランプ) 約束の花はもうすぐ咲こうというのに 捧げるものがこの手にありません。 おお! ロー、ラー、グラウル それならおまかせ、 トゥラ、トゥラ。 待っておいでよ、探してきてあげるから 彼方に消えて埋もれようと見つかるさ たなびく雲が洋灯の光に照らされて 吹く風にあの人の残り香を感じたら すぐに持ってきてあげよう。 だからあなたはそこにいなさい 大切な花が傷つけられぬように。 ――たったそれだけの、 あなたとわたしの秘密 おお! ロー、ラー、グラウル いつまで泣いている、 トゥラ、トゥラ。 ――まだ困りごとがあるのかい? ――哀しみをいまでも感じるの? いいえ! ラッタ、タラルタ 違います、 嬉しいの。 哀しみは去り、喜びの花がふたたび咲きました いまはただ、 助けてくれたあなたへ贈り物がしたいのです。 そう言うと懐かしい花の香りがわたしを包んだ そしてあなたの匂いも混じるその中で わたしは密かな夢を見たけれど ――しかしこれは、 だれにも言わない秘密
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