まっ白なページの上にぼくらの児はまだ生まれていない。 いま、きみは眠りの縁で待っている、ぼくらが手を差しのべるのを。 名もなき児の睡りは微睡(まどろみ) うつつでもなく、夢でもない、不確かな間(あわい)に浮かぶ ぼくらはときに躊躇いながらもきみの手を取り「線」と「弧」からなる海へと導こうとする 砂にいくつもの足跡を残して、 ときにふり返り、それを確かな形にして。 海に至るとき、きみはどんな児となるだろう? 「線」と「弧」の海はまた、ぼくらの頭にも広がっていて 雄々しい馬がすまうこの海に、 微睡むきみたちの姿をみる。 馬の背にもたれるきみたちの手は柔らかく閉ざされていた 懐かしいもの、忘れていたもの、おそろしいものを握ったままに。 そうして微睡むきみたちの顔は ときに昔の面影を宿し あるいは見知らぬ顔となって、 ぼくらの心をかりたてた、 その顔をまた忘れぬよう記憶に残させようと。 きみたちをのせ馬は駆け出す、 ぼくらの頭のなかで幾たびも蹄を響かせ 手にしたものを誇らしくかかげ。 ぼくらもまたその馬にまたがり共に走る、 狭い海から広い海へと向かう道を。 その道をゆくさなか、ときとして妖精たちが悪戯をする ぼくらの手から児を攫いどこか遠くへ連れていく。 ミルク色の世界に導かれ、 その上できみたちは踊りだす いつとなくその背中に小さな羽根を生やして。 暖かい春の日差しに、欠けた夏の月明かりに、冷たい冬の星明りに 虹色の羽根をきらめかせ、 踊るきみたちの足元で、にぎやかなメロディーに合わせて、 不可思議な模様がひかれていくのをぼくらは目にする。 背の羽根から光が零れるたび きみたちの模様は輝き、 姿を変えてゆく。 ときに形を歪ませ、 ときに意味を隠し、 あるいは見知らぬ世界の標ともなって。 ぼくらの手から離れたきみたちが、 まだ見ぬ海への道をつづる。 また海へと向かう誰かの手に導かれ、児がひとり、 生まれてくる。 モノクロームの地平線をひとりの女の子が 真っ黒なブーツをはき、黄金(きん)の筆を手にして歩みだす。 砂に輝く足跡を残して、一歩ずつ大きくしていきながら、彼女は探し求む 高く、高く前を見据え、 幾たびも、幾たびも足跡をふり返りながら。 その頭上で星々は煌き、彼女を祝福し 眩い輝きが彼女の海への標となり その瞬きのひとつひとつに彼女は問いかけ、そして探す 星々の「理由」と、 瞬きの「意味」を。 ぼくらはなぜきみたちの手をとる? ぼくらはなぜ海へ向かおうとする? ときに惑わされさ迷いながら 海を目指す 名もなく、話す言葉さえもたないきみたちの声を聞きたいがために。 砂浜に、道の途中に、見知らぬ地に転がった きみたちの世界の言葉を集め、 いつか海辺に至り、名をもったきみたちが 手を取り合って唄いだす 故郷の言葉や異国の言葉で。 海に広がるきみたちの唄、その音色を ぼくらは求める。
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