天は色を無くし 青は美しくもむごたらしく冴えわたった 極光を輝かす空 すました顔をしている もはや何の色もいらないと いかなる乱れもないと 君は本当にそう思うのか? 日ごと誰彼(たそかれ)て 君は知らず知らず緋(あけ)に染まりゆく 心にまだ残る緋(ひ)の火傷 痛み疼くたび 焔を吹き上げ 眼を焦がしては炙りだす 忘れがたきあの雲の色 緋色に染まりゆくときの美しさ ただ一色(いっしき)であるよりも 千々(ちぢ)に変わりゆく様は 生に狂(たぶ)れた果ての姿であろうとも ただ一色であるよりはまた楽し 色の変わらぬは 無色と同じ いまだ乱れる天を覚える身には耐えがたし されどその心を誰ぞ知る 君を見るのはただ美しく死した人々 彼らは等しく笑うのみ 天は無色であるがよきと いまひとり無常を忘れし天を眺め わが身の無聊(ぶりょう)を嘆く 恐れるはむごたらしき天の毒 密やかにしのびて心を衰えさせ 踏みしだいた野花の尊きを忘れさす 君の心を幽かにつなぐ 忘れがたき緋の美しさ 幾たび眺めども こころ震わすを禁じ得ず 天地の間(あわい)に溶けゆく緋の帯の美しき 日ごと地の衣を揺らめき輝かせ ときに固き土の身すら震えさす 緋の姿はとどまることを知らず 薄きに濃きに形かえ 色もただひとつでなく 幾重の異なる朱を交える 移ろう緋の陰影 数多の朱の深浅 その楽しさ華やかさ 天の毒に侵された君をすくい ついにはその色を求めさす 色彩をもち変わるものこそ快なり 甘美なるはこの色をわが手で掴むこと いま君は欲す 天地の間に溶く緋色の糸を集め 結ぼれる地の衣を揺らめかし 美しき緋の衣を綴りまといて 三才の心ことごとく震わすを されど天の毒に侵されし君は知らず 緋の形を変え 色の数多をもてど乱れざるは 見えぬものが和を保つため もし君がそれに気づくとき ついに天の毒は薄れゆかん 無色の天に数多の緋はのぼり 地は歓喜してこころ震わせ 人は忘れたものを思い知る
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