熱力学の三原則。
第一条。ある閉じた系の中のエネルギーの総量は変化しない。
第二条。断熱系において不可逆変化が生じた場合、その系のエントロピーは増大する。
第三条。完全結晶のエントロピーは絶対零度ではすべて等しくなる。
ただし、第二条にはわずかな例外が存在する――
「私は地獄が好き。地獄鴉だから。さとり様のいる地獄が好き。さとり様のペットだから」 「…………」 「それでね、お燐のいる地獄が好き。お燐は、私の初めての友達だから。もしお燐が天国に行きたいって、どうしても行きたいっていうなら、私がついていってあげる。一人じゃ寂しいもんね」 「だからいけやしないって――」 「でも、それまではずっと一緒。二人で、一緒。ねぇ、お燐は地獄が好き?」 |
三本足の鴉を殺し。
序章・明星。地底の底で、猫と鴉は出会う。
破章・残月。地底の底で、お燐とお空は友情を育む。
急章・落陽。地底の底で、燐と空は対峙する。
ただし、破章にはわずかな暗転が存在する――
「何も違わないわ。この力があれば、地上を征服することなんて容易いわ。そうよ、太陽は地上よりも上にあるべきものなんだから。ね、お燐。二人で、私と貴方の二人で、二人だけで、二人だけの、」 |
――天国を手に入れましょう?
赤、赤、黄。焼けた身体。熱。羽。黒い羽が、落ちて。
鳥。鴉。溶ける羽根。融ける身体。光。太陽。熱。黒い
太陽。空から。空。空が。お空が。動かない身体。赤い
瞳。力。神。死。失われていく熱。吐息。冷たい肌。死。
空が。霊鳥路 空が。溶ける。融ける。とけてなくなる。
熱。熱が――
「それが貴方の罪なのですね」
さとりは言う。
燐は頷く。
それは、地上に忘れられた地底の物語だ。
それは、色褪せてしまった世界の物語だ。
言わなければならない。
語らなければならない。
罪について。
愛について。
死について。
なぜなら――
――霊烏路 空を殺したのは、あたいなのだから。
これは、友情の物語だ。 天国を夢見る猫と、 地獄を愛する鴉の、 地下の底での友情の物語。 |
これは、破滅の物語だ。 罪を背負った猫と、 神を食らった鴉の、 破滅へと突き進む物語。 |
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イカロスの翼の、物語。 |
三本足の鴉を殺し
第六回博麗神社例大祭 ぬ43b四面楚歌にて頒布
新書サイズ 132P 700円 フルカラーカバーつき
さとりは問う。
「はたして、どちらが幸せなのでしょう?」
<戻ル>
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