追放者







 とうとう立った丘の上から見下ろした街の景色は、小さな部品を雑然と組み合わせた集積体にしか見えなかった。
 綿密に不規則に組み合わさったガラスの平原だった。
 このぎっしりと組み合わされた景色の何処にも、僕のために空いている場所はなかった。
 果てしなく、閉じた景色。
 果てしなく、閉じた世界。
 いや――果ては有る。終わりも有る。僕にはないというだけで。
 そんな場所は僕の居るべき場所ではない。真っ当な世界から追放されてしまった僕の居るべき場所では。
 追放されたことを悔やんでいるわけではない。
 こちら側にきたことで、僕は生き返った。
 左目を失った僕は、代わりに生きるべき世界を得た。
 現世から追放された八純啓は、左目に異界を見出した。
 ガラスの裏側にあるような、違う世界を。
 向こう側に世界が広がることを知っている人は少ない。
 大抵の人が、ガラスに反射した自らの世界を見て満足してしまっている。向こう側に何があるかなんて考えもしないし、見ることも出来ない。虚像を虚心を埋めるだけだ。
 小さくて、煩雑とした街。
 人の生活と意識をぎっしりと詰め込んだ、人のための世界。
 そこは僕の場所ではない。
 街。人。生活。どれも遠いものだ。
 山。神。異界。どれも近いものだ。
 山の奥、神の膝元。学校の陰に隠れた異界。
 そここそが、僕の居るべき場所だ。
 だから――僕は、僕の世界を絵に描く。
 僕にしか見えない僕の世界を、僕以外の誰かに見せるために僕は絵を描く。
 最初はただ恐怖を克服するためだけだったが、今は違う。
 僕は確かに描きたくて書いているのだ。
 ヒトの世から追放された僕は、絵を描くことしか出来ないから。
 せめて、向こう側をこちら側に――
 追放されて、なお戻ってきたがっている彼らをこちら側に――
 呼び戻すための手段として、僕は絵を描く。
 そうすることが、同じく追放された僕の指名なのだろう。
 目隠しをされた少年。
 神隠しにされた少女。
 姿形を保てない肉片。
 数多幾多の異界異形。
 彼らは一概に戻ってきたがっている。
 追放された彼らは――当然のことながら、元はこちら側のモノたちだったのだから。
 大好きな彼らのために、僕は絵を描く。
 いずれこの絵を見たヒトが、彼らを引き戻すだろう。
 引き戻すことの出来るヒトが、いずれ僕の絵を見るだろう。
 そのときこそ、彼らの望みは叶う。
 そのときを夢見て――追放された僕は、ただひたすらに絵を描き続ける。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆
あとがき。
ミッシング小説・八純啓の物語でした。


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 次回のやる気につながりますので……感想、ひと言遠慮なくどうぞ。

また八純か!(挨拶)
このままだと異界の画家ファンサイトになってしまいそうです。
 ……だって空目より出番多いよ、このヒト。
まあ、でもそもそもいない数少ないでろう八純ファンが気に入っていただけれ幸い。
散文から小説まで、本当に出番多いし。
亜紀ファンの方にはゴメンナサイ。
あと残るはフェアリーテール。
これには亜紀が出てきますのであしからず。

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