夕暮の少女




 さよなら、と彼女は言った。

 だから僕は、夕暮れの校舎を彷徨っている。


       ◆


 結局のところ、何が正しくて何が間違っていたのか、僕には判らない。
 少女は救われ、夕暮れの校舎は静寂を取り戻し、こうして僕は救われずにいる。
 校舎には誰もいない。
 教室にも屋上にも中庭にも図書館にも弓道場にも人の姿は無い。
 いないのは当然だ。
 救ったのだ。
 救われたのだ。
 なのに……なんで僕はここにいるんだろう?
 判らない。
 判らない。
 判らないことは恐ろしい。
 恐ろしいけれど怪物になっても天使がいないから怪物になれず恐ろしいままに僕は校舎を彷徨い続ける。
 少女は天に帰った。
 もとの場所へと帰った。
 けれど僕はこのままだ。
 順番を間違えたのか?
 いや、そんなことはない。儀式は完璧だ。
 なら――少女は救われてないのだろうか。
 僕はまた、夕暮れの学校を彷徨い続けて少女を救うのだろうか。
 自分が救われる日を夢見て。
 判らない。
 けど、もう彷徨うのは嫌だ。
 かえりたい。
 僕は高らかに笑う。
 僕はさめざめと泣く。
 ……帰ろう。還ろう。
 自分のいるべき場所へ。
 おうちへ。
 けど、おうちは無い。
 どこへかえればいいんだろう。
 かえるとことは……無い。
 なにも無い。
 意味も無い。
 嫌だ。
 意味がないのは嫌だ。
 することが無いのは嫌だ。
 何も無いのは嫌だ。
 僕には意味がなくすることもなく死ぬ理由すらない。
 彷徨っても救うことなど出来ない。
 救われることも無い。
 僕は救われたい以上救うしかなくそのためには彷徨うしかない。
 僕は誰も救うことなど出来ないからかえりたいのにかえる場所がない。
 僕は天使から人間にかえった少女のようになりたい。
 僕は……。
 僕は……。
 僕……。
 僕……。
 ……。
 僕は……誰なんだろう?



        ◆



 僕は夕暮れの校舎を彷徨う。
 彷徨うんです。
 彷徨います。



 ――さよなら。



 どこかで、だれかが泣いているような気がした。








◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
あとがき。
さよならを教えて第6段、最終話夕暮の少女。


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儀式は終わって、彼も終わりました。
 帰ろう。還ろう。
自分の家へ。
家がないひとは建物へ。
其れすらない人は自分の中へ。
夕闇に佇む校舎の中へと入りましょう。
きっと救われるから。

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