1 カントリーロード
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 長い長い長い長い長い長い長い坂道を、アリスは独りで進んでいる。
 坂はどこまでも続いている。ゆるやかに伸びる坂は、幻想郷の遠くまで続いている。
 この道をどこまでもゆけば、どこに辿りつくかを、アリスは知っていた。
 魔法の森に続いているのだ。
 魔法の森の外れの、霧雨 魔理沙の家に続いているのだ。
 坂は魔理沙へと続く道だ、アリスはそんな気がして、少しだけ嬉しかった。

 魔界から幻想郷へ来たとき、アリスは一人だった。
 そして、独りだった。
 アリスは常に独りぼっちだったのだ。
 そして、独りであることを、アリスは恐れなかった。
 それこそが、自分だと思っていたから。
 独りで生きる。
 怖れずに。
 それこそが強さだと夢見ていた。
 寂しさを押し込めて、強い自分として生きていこうと、そう思っていた。

 ――けれど、それは無理だった。

 この坂道の続く先に居る少女。
 霧雨 魔理沙に出会ったとき、その強さは、もろくも崩れ去った。
 独りでいることの寂しさを、アリスは知ってしまったのだ。
 一度知ってしまえば、独りでなんていられなかった。

 だから、アリスはこの道を進んでいる。

 この道の先。
 魔法の森の果てには、霧雨 魔理沙がいるから。
 独りではないと教えてくれた、黒白の魔法使いがいるから。
 魔理沙のところへと続いている道を、アリスは、ゆっくりと、ゆっくりと進む。

 道は長く、魔理沙は遠い。

 進みつかれたアリスは、少しだけ休んだ。
 止まって、あたりを見回す。
 空にかかる太陽はゆっくりと動いている。
 坂を進んでいる間にも、少しずつ、少しずつ太陽は動いている。
 太陽よりも、アリスの歩みは遅かった。
 けれど、坂の先を見ていると、力がわいてきた。
 この先に、魔理沙がいる。
 そこで魔理沙が待っていると思うと、進む体に力が入った。
 
 アリスは進む。
 長い長い坂道を、アリスは独りで進む。
 どこまでも続く道を。
 ただただ、魔理沙に会うために。

 けれど、坂は長くて、いつまでたってもたどり着かない。
 くじけそうになる心を奮い立たせる。
 くじけそうになる身体を奮い起こす。
 アリスは活をいれて、ゆっくりと、ゆっくりと進む。
 魔理沙の顔を思い浮かべながら、歩きつづける。


 長い長い長い長い坂道。
 アリスは、魔理沙へと続く道を、ゆっくりと歩きつづける。


 道は長い。


 そして、その道を、アリスは歩きつづける。



『何処か』にたどりつくことは、決してない。









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◆あとがき◆


 霧雨 魔理沙は何処にもいない。




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