1 | あなたが欲しい |
1 |
0 | 0 | |
00 |
【始】 葉緑が足元に陰を落としていた。影の色が黒というのは固定概念に過ぎないのかもしれない。少なくとも、今足元に続く影は、森の緑を反映して深緑に見えた。黒よりも暗い緑。鬱蒼と生い茂る森の樹木は、光の通行を許可しない。森中の光分子は数を絞られ、何処となく湿った草が短く生えている。光を浴びる樹木は何処までも伸びていくが、その中は、暗々と、黒々と、停滞しきっている。 魔法の森。 何が魔法なものか、と彼は思う。こんなものはただの森だ。日当たりが悪いだけの森だ。そう思い込もうとするが、すればするほど森の陰は暗くなり、心にまで緑の陰は落ちてくる。不安と恐怖が足を揃えて忍び寄ってくるのが聞こえる。耳に煩い音があると男は苛立ち、それが自身の吐息であることに気づかない。 魔法の森。 魔の森――魔と、その名で呼ぶにふさわしい森だった。森は光を拒み、森は闇を愛する。森は魔を内包し、森は人を誘い込む。哀れな生贄として。森の肥やしとして。そうして森は、ゆっくりと魔を育てていくのだ。自分の踏んでいる地が、人骨によって成り立っているような気がして、男は嫌悪感を露にした。一歩足を踏み出すたびに僅かに土に沈む感触や、むせ返るほどににおいたつ土と葉の匂いが、時計の針よりも遅く理性を奪っていく。 足を踏み上げる。日当たりが悪いせいだろう、土は湿っていて、靴の裏には土が付着していた。あげた足を下ろす。やわらかい感触。靴の中ほどまで土に沈む。やわらかい地面を歩いているというよりは、硬い沼を歩いている感触。 気持ちが悪い。 それでも走るわけにはいかなかった。何故か? 決まっている。ここが魔法の森だからだ。魔を内包する森。それは即ち、この幻想郷に満ちる妖怪や妖精――そして、それ以外の何者かの住処だというところだ。 そんなところを足音も荒く駆け抜ければ、三歩と行かぬうちに襲われてしまうだろう。ここ最近は随分と友好的にはなったものの、巣穴の中にのこのこ足を踏み入れてきた人間に対して、友好的である理由はない。 男とて、何も好き好んで魔の森へと足を踏み入れたわけではない。むしろ、叶うことなら今すぐにでも逃げ出したいと思っている。それらが叶わない理由はただのひとつだ。 迷っているからである。 近隣の村人である男は、山菜の収穫に山を訪れて迷った。彼の土地勘が鈍っていたわけではなく――彼の記憶していたときよりも、魔の森が育っていたことが原因である。気づけば森の端に触れていた。そうなってはもう、魔の森に取り込まれてしまう。 一度入れば、出られない。 竹林のように――迷ってしまう。土地勘もなく、方位を確かめようにも、空は暗く葉で覆われ、木々は滅茶苦茶な育ち方をしているせいで頼りにならない。道を聞く相手などいるはずもない。 困った。 そうして今、男は困り続けている。 迷い続けているのだ。 ――生きて帰れるかな。 心の中に浮かび上がった不安に答える言葉を、彼はもたなかった。話す相手もいなかった。声を殺し、音を殺し、静かに歩き続ける。何処に向かっているというあてもない。まっすぐに歩き続ければ、いつかは外にたどり着くだろうという、それだけしか考えていなかった。『立ったままでいるよりは、移動したほうがいくらか安全だろう』という、根拠のない思考を盲目的に信じた。 歩く。靴が沈む。地は異質だが、そのおかげで足音は鳴らない。あとは体が葉に触れないように気をつければいい。耳を澄まし、自身に近づくものがいないか、常に気をくばればいい。神経を鋭敏なまでに研ぎ澄まし、 「――あの、」 いきなりかけられた声に、男は意識を白くして跳ね上がった。女の声は霞のように小さかったが、意識を尖らせていたせいで、男には雷が落ちたように聞こえたのだ。とびはね、あられなもなく腰を抜かして尻から着地する。悲鳴をあげることもできず、あわ、あわ、と声にならない音が口から漏れた。 ――喰われる。 本気でそう思った。こんなところで声がかけられるはずがない。こんな魔の森の中に、尋常な存在がいるはずもない。おおかた妖怪か、妖怪に似た何かか、妖怪に近い何かで、どちらにせよろくなものではないのだ。ついに見つかってしまった、己は喰われて人知れず森の養分になるのだ。男は悲観し、『どうにもでなれ』というやけっぱちな気持ちで振り向いた。 女がいた。 「…………」 確かに、尋常な女ではなかった。 男は言葉をなくす。女の姿に。森の木によりかかるようにして立っていた女は、年の頃十三、四くらいだろうか、まだ女になりきれない、どこか幼さを残した少女だった。黒と白で構成された、エプロンドレスのような服を着ている。服からは色彩が抜け落ちているというのに、波打つ髪が、森の中でなお色鮮やかな黄金の光を放っていたからだ。 男は言葉をなくす。少女の恐ろしさ、にではない。少女は、口が耳元まで裂けてもいなければ、鋭い牙や羽があるわけでもなかった。足も二本ある。幽霊にも亡霊にも見えなかった。 否―― 少女が、それ以上のものだったからこそ、男は言葉を失ったのだ。意識を奪うに足るだけの、美しさを秘めていたから。幽霊よりも亡霊よりも妖怪よりも妖精よりも、現実味も真実味も消えうせた美しさ。万人が持ちうる『理想の少女』を体言したかのような雰囲気を伴って、少女はそこに立っていた。どことなく陰鬱げに伏せられた瞳も、腰の前であわせた白い手も、スカートから伸びる細い足も、男から意識を奪うに十分だった。 人には思えなかった。 人でなくてもよいと――ほんの僅かに、男は思ってしまった。 それこそが魔なのだと、わかっていながらも。 「助けて、いただけませんか」 女は言葉を続けた。声まで美しいと、男は感じた。控えめな細い声。けれどその奥に意思を感じさせる声。秘してこそ華――その言葉を体言したような、声だった。 「助ける……?」 男は首をかしげた。どちらかといえば、男こそがその言葉を言いたかった。魔法の森で迷っているのは己の方なのだから――そこまで考えて、男は思う。 この少女も、或いは迷っているのかもしれないと。 そんなことがあるはずもないのに、男はそう思った。そう思いたかっただけなのかもしれない。少女も自分と同じ身であると、願いたかったのかもしれない。 「迷ったの、ですか」 「帰れない――んです」 男の言葉に、少女は首を振ることなく、視線をあげることなく、それだけを答えた。 帰れない。 帰ることができない。 此処が帰る場所ではない。 魔法の森の外へと、少女も出たがっているのかもしれない。少女の言葉の真偽は不明であったし、そもそも、美しすぎる少女はどう考えても妖しいものであったけれど――男は、すでに少女を助ける気でいた。 魅入られて、いたのだろう。 男はそのことに自身で気づいていた。気づいた上で、魅入られるのも悪くないと、そう思ってしまったのだ。あてのない森中の強行軍に疲れていたこともあるが、ようは、ごく純粋に。 一目惚れのようなものだった。 人間であろうが妖怪であろうが――関係がない気がした。 「どうか、助けてください」 少女は繰り返し、ようやくに、顔を上げた。 金の瞳が、男の瞳を、まっすぐに覗き込んでくる。視線が合い、男も、少女も、目をそらそうとはしなかった。小金の瞳は美しく、まるで地に落ちた星のようだと、男は思った。 男は立ち上がり、少女の下へと歩み寄る。視線をそらすことなく、一歩、一歩と、近づいていく。 気づけば、金の瞳が、すぐそばにあった。 「貴方の名前は?」 少女の顔を間近で見つめながら男は尋ね、声とともに手を差し出した。助ける、という意思表示。少女は、男の顔と、差し出された手を、幾度か見比べた。 それから、僅かな沈黙。 ほんの一瞬ほど、何かを考えるように沈黙して。 「――霧雨 魔理沙です」 言葉とともに、少女は、男の手をとった。 【終】 暗いはずの森が明るく感じられた。実際に光量が変わったわけではない。天上では葉々が生い茂っているし、相変わらず空の光は届かない。それでも、繋いだ手の先に少女がいるという、ただそれだけのことで森の闇は遠ざかっていった。 繋いだ手は人間のように温かく、人間のものとは思えないほどに美しかった。今までに一度として水作業をしたことがないかのように、白く美しい肌。細い指が、申し訳ない程度に力をこめて、男の手を握り返していた。離さぬよう、逸れぬよう、迷わぬよう、男はその手をしっかと握る。 繋いだ手が、男の心から恐れと不安を取り除いていた。己がこの少女を助けるのだという思いが、疲労すらも忘れさせた。孤軍奮闘する騎士の如く、男の顔には生気が浮かんでいる。女の表情は、やはりどこか陰鬱さをはらんでいるが、男を嫌がっているそぶりはなかった。 「足は、」 隣を併歩する少女――魔理沙をみやりながら、男は尋ねる。 「大丈夫ですか」 足。男の腕ほどにしかない細い足。はいている靴も、森を歩くにふさわしいといえない革靴だった。男は少女を気遣ってゆっくりと歩いているが、それでも魔理沙は、どうにかこうにかついてゆく、という有様だった。 か弱過ぎた。 可憐過ぎた。 たとえ妖怪だったとしても、この少女は人よりもずっと弱いのではないか――それこそ、人間に助けを求めねばならないほどに――そんな思考が、男の脳裏に浮かぶ。もちろん、それらもすべて嘘で、少女は必殺の罠、あるいはゆっくりと捕食できる巣へと男を誘い出しているのかもしれない。その可能性は理解していたが、低いと男は踏んでいた。ただの人間である男に対して、妖怪がそこまでに気を使う必要がないからだ。 いや、 そんな理屈を抜きにしても――たとえ罠でも、ついていきたいと、男は願ったのかもしれない。 「大丈夫です」 魔理沙は弱弱しい声で答えた。明らかに、こうした道で歩くのになれていなかった。男の手がなければ、既に転んでいたかもしれない。 「おぶりましょうか」 下心なく、本心から男はそう告げた。こうして歩くよりも、少女を背負って歩いた方が、ずっと速いように感じられたからだ。少女の体は見ただけでも細く、重さを感じさせなかった。本当に体重があるのか、疑ってしまうほどに。 「いえ――」 少女は静かに首を振った。遠慮する、と。こうして手を繋いでいただけるだけで十分だと、少女の瞳が語っている。にべもなく断られては、どうすることもできない。男にできることはただ、握った少女の手を離さぬよう、しっかりと握ることだけだった。 手を繋いだまま、魔法の森を歩きつづける。 僅かに足音がする。己の足音と、少女の足音。重なるように、被さるように。二重奏になった足音が、先よりも少しだけ煩く聞こえた。一人よりも、二人のほうが妖怪に見つかりやすい。そう思ったが、少女の手を離す気にはなれなかった。 あるいは。 今だけではなく。 ずっと手を繋いでいたいと、男はそう思ったのかもしれない。この手を離すことなく、どこまでも共に行きたいと、そう願ったのかもしれない。 思いと、 願いと。 応えるように少女は男の傍に寄り添い、二人は手を取り合って進んでいく。 奥へ。奥へ。森の奥へと。 外へ。外へ。森の外へと。 そのうちに―― 「…………」 男は気づいた。いつの間にか、自分が誘導されていることに。行く道を、少女に導かれていることに。 初めは己の意思で歩いているつもりだった。明確な意志を持ち、外に出るという目的をもち、行く当てもない森の中を進んでいるつもりだった。けれども――気付けば。 たとえば、分かれ道で袖をひかれたり。 たとえば、少しだけ体を押したり。 気付かれない程度に、不自然でない程度に――けれど意思を誘導する程度に、少女が行く先を選んでいることに。元より右も左もわからぬ森の中だ、真っ直ぐに進んでいる自信もない。ただひたすらに歩いているだけだったものが――明確な目的地へと、誘導されている。 少女は、どこかへ、連れていこうとしている。 可能性は、二つあった。 一つは少女が森の外へと出る道を知っている可能性。もっとも、これはあり得ないと男は思っていた。道を知っているのならば助けて、などとは言わぬだろうし、何よりも正直にそのことを男に話せばいい。 もう一つの可能性。 これが罠であり――少女が、巣か何かへと引きずり込もうとしている可能性だった。 そちらのほうがありそうだ、と男は思った。初めから不審なのだ、それくらいのことがあったとしても、驚きはしないだろう。 蜘蛛の糸にひっかかったか。 虎穴へと迷い込んだか。 少女は――男を、誘っている。 男は、手を離さなかった。その誘いに自ら乗った。少女がどこかへ連れていってくれるのならば、それに従おうと思った。それが罠だと判っていても、男の心はすでに、少女に捕らえられていたのだから。 何よりも―― 助けてと、そういった少女の顔は。 本当に悲愴に満ちていて――嘘を言っているようには、男には見えなかった。 それだけの理由で。 それだけの理由があれば、十分だった。 少女と共に、男はゆく。 どれほどの道を歩いたのか。 どれほどの時を歩いたのか。 やがて―― 二人は。 「――――」 自身の歩く道が変わってきていることに、男は気づいていた。ぬかるんでいたはずの地面が、硬い感触を返してくる。濫立する木々の種類が変わってきている。澱んだ空気が、遠くへ抜けていく気配がある。 ――森の外へと、近づいているのだ。 そのことに気付いた瞬間――男の胸に飛来したのは、一言では語りつくせない複雑な感情だった。無事に魔法の森から抜け出せられたという感慨と、罠も何もなかったというあっけなさに対する肩透かし、そして、 森を抜けたら、少女と別れなくてはならぬ。 その思いが――男の足を遅くした。いっそ、少女が妖怪であり、己を捕らえて離さなければ良いのにとすら、心のどこかで思ってしまった。森を抜け、助かってしまえば、それで終わりだ。少女はきっと、自身の住処へと帰っていくだろう。 それが、哀しかった。 心にぽっかりと穴が開いたような――喪失感があった。 けれど、少女は。 足を止めかけた男に抗うように、前へ、前へと進んだ。繋いだ手に連れられて、男も仕方がなく前へと進む。その歩みは遅く、 少女の歩みは、速かった。 ――するりと。 繋いだ手が離れた。「あ」。男が言葉を漏らした。少女が振り返った。 振り返った少女は。 「助けて――くださいね」 哀しそうに、微笑んで。 そうして、消えた。 影も形もなく――消え去った。木と木の間に溶け込むようにして、その背が見えなくなる。蜃気楼のように消えたとしか見えなかった。木の向こうに行ったのだろうと、男はそう思った。思ったが――それを信じることはできなかった。 消えた。 少女が、消えた。 ――己を置いて。 信じたくなかった。 前へと出れば、木々の向こうに出れば、少女はそこで待っているに違いない。そう思った そう願った。 男は。 消えた少女の姿を追うようにして、木々の間をすり抜け、向こう側へと出て、 少女の死体があった。 「――――」 男は――言葉を失った。眼前に飛び込んできた、あまりもの光景に。信じられない光景に。信じたくない光景に。こんなことがあってはならぬと、頭のどこかで囁く声が聞こえる。こんなことがあるはずがないと、心のどこかで叫ぶ声が聞こえた。 死体。 死体。 死んだ体。 少女の、体。 死んだ少女の、体。 霧雨 魔理沙が、死んでいる。 「…………」 ふらふらと、誘蛾灯に誘われる虫のように、男は一歩を踏み出した。よろめく。まっすぐに歩くことができない。少女へと歩みよったはずなのに、検討違いの方向に足を踏み出してしまう。二歩目に軌道修正しようとするが、やはり行き過ぎて、ジグザグに歩いてしまう。 まっすぐに歩けない。 思考が定まらない。 ゆれている。 ゆらいでいる。 世界が。 思考が。 少女の死体を目の辺りにして。先まで話していた、先まで手を握っていた、抱きしめた体のぬくもりが、香りが、まだ胸の中に残っている――少女の死体が、そこにあった。 死してなお、美しい姿だった。 否――どころか、死してさらに美しくなったとすら、男は思った。背徳的で、淫靡的だった。陰鬱げに伏せられていた瞳は、輝きを失ったことで、その深みを増していた。金の髪は、変わることなくゆれている。肌は微塵も動かない。体は動かない。 磔になった少女は、僅かにも動かない。 磔――磔と、いうよりほかはなかった。磔刑。原始的な罰。腹に巨大な杭を打ち込まれ、少女は木にうちつけられていた。吸血鬼のように。打ち滅ぼされる吸血鬼のように、杭でもって、少女は磔にされていた。 腹にあいた大穴からは、一滴も血が流れ落ちてはいなかった。どころか――動かないことを除けば、少女は死んでいるようには見えなかった。生きているようにすら見えなかった。死体特有の腐敗や汚らわしさはなく、生きるために必要な活力や汚れもない。生きてもいない、死んでもいない、美しい姿で――少女は、磔にされている。 心惹かれた。 あるいは、初めて少女とめぐり合った、あの瞬間よりも――男は、少女に、心惹かれていた。 己のものにしたいと、そう願ってしまうほどに。 恐怖はなかった。男は、ふらふらと、ふらふらと、魔理沙の死体へと近寄る。一歩ごとに地がぬかるみ倒れそうになる。それでも男は歩むのをやめない。一歩、一歩、少女の死体へと近づく。もう少しで手が触れる。男は、羨望に満ちたまなざしで、少女の死体へと、手を伸ばし、 「助けて――くれませんか」 少女が言った。 死んだ口から声が漏れる。体は動かない。動いていないのに、口からは声が漏れ出ていた。喋っている、とは思えなかった。ただ、声という音だけが、口から零れ落ちたように感じた。 男は、驚き見上げる。少女の姿に変わりはない。死んでいる。その瞳は、どこも見ていない。 どこも見ていないのに――目があった、気がした。 死んでいる。 少女は、貫かれて、死んでいる。 男は。 「――――」 男は―― 「――魔理沙」 初めて。 少女の名を呼び、止まっていた手を、さらに伸ばした。少女の腹を貫き、背後の樹へと磔にしている大きな杭を、その手で握り、 引いた。 あっけないほどに、簡単に杭は抜けた。血は噴き出ない。抜け落ちた杭は、空気に溶けるようにして消えた。 少女の腹には――ぽっかりと、穴が開いている。向こう側が見えるほどの、大きな穴。けれど、血も臓物も、そこからは噴き出ない。はじめからそうであったかのように、ただ、大穴があるだけだった。 穴の開いた少女の体が、杭という支えを失って倒れこむ。男は、倒れこむ少女の体を、迷うことなくだきとめた。 想像していたとおりに、その体は軽くて。 想像の届かないほどに――その体は、温かかった。 人のように。 「ああ――――」 抱きすくめられて、少女が、声を漏らす。 涙交じりの、嬉しそうな声を。 男はその声を、耳元で聞いた。 「――――ありがとう」 【終】 更に幾ばかを歩いた。罠にも、巣にも出会わなかった。魔法の森を抜けた先にあったのは神社で、男は生きたまま、神社の裏手へと出た。 男の手には、穴の開いた藁人形があった。 人形の顔は、どこか幸せそうに、笑っていた。 |
00 |
0 | 0 |
↑作品を面白いと感じた方、押していただければ幸いデス↑
|
||
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||