「圭一君、知らないおじさんと何の話をしてたの?」
「皆には関係の無い話だよ」
 ――その言葉に、レナが豹変した。
 いつもの穏やかな態度からは想像できないような激昂の貌へと。
 そして叫ぶ。
「嘘だっ!!!」
 圭一は――平然とした態度でさらりと答えた。
「嘘さ」
 間があった。
 怒っていたはずのレナは、呆けた表情しか出来なかった。
「……えっと……うん……あれ? 何かな……かな?」
「皆に秘密がある様に俺にも秘密があるって事さ」
        ――『ろくでなしの詩』様より引用



 こんな前原圭一なら惚れる。




 日も沈み、どの家庭でも夕食の準備が始まった頃。
 圭一の家に、来客が来た。
 こんな、ありえない時間に。
 ありえない人間が、ドアの向こうにいた。
 家は遥か遠くのはずの、レナがそこにいたのだ。
 レナは言う。
「圭一君のご飯……カップラーメンだけじゃ栄養が足りないよ?」
 彼女は言う。
 昼間、カップラーメンを圭一が買ったことを。
 何味が好きで何を買おうと悩んだかを。
 圭一の両親が今居ないことを。
 知りえないはずのことを、次々とレナは言い当て、懇願する。
 おかずを持ってきたから入れてくれ、と。
 圭一は答える。
「せっかくだけど、今日は簡単に自炊したんだ。カップ麺はただの非常食だよ」

 ――意外と万能だ。


        ◆


 真夜中。
 誰もが寝静まった頃、前原屋敷の前に人影があった。
 園崎魅音――あるいはその姿をした詩音――だ。
 どちらでも、同じことなのかもしれない。
 この双子に限っては、名前の区別など意味をなさないのだから。
『彼女』は狂気を孕んだ目つきで前原屋敷を見上げ、圭一の部屋の窓に向かって小石を投げた。
 後ろ手には、こっそりと凶器を持っている。
 圭一を殺すための凶器――あるいは狂気――を。
『彼女』は再び小石を投げる。
 圭一は――
 圭一は、寝ていた。爆睡していた。
 最後まで、まったく気づかなかった。

 ――その上鈍感だ。


        ◆


 綿流しの夜。
 誰もが古手梨花の踊りに熱中する中、園崎詩音は前原圭一にある話を持ちかけた。
「圭ちゃん……宝物庫の中、覗いてみたくないですか?」
 詩音の誘いは誘惑的なものだった。
 常日頃から鍵で閉ざされたその場所を、今なら誰にも気づかれることなく見れる。
 好奇心はある。
 隠されたものに対する興味もあった。
 けれども、圭一の答えは――
「やめとくよ。鍵をかけてあるってことは、入っちゃいけないってことだろ? 後で叱られても知らないぞ?」

 ――君子危うきに近寄らない。


        ◆


「圭一君……そのクラブ何に使うつもりなのかな? かな?」
「……決まってるだろ? これで野球するんだよ」

 ――あっさりと開き直る。

「――打ったぁぁぁッ!! ピンチヒッター前原圭一、なんとゴルフクラブでホームランだァァァッ!!」

 ――そして打つ。

        ◆


 三方を本棚に囲まれた父の部屋。
 椅子の上に踏ん反りかって座り、机に両足を組んで乗せた父が言う。
「さあどうする? 私には親として同人誌のスイもアマイも教えてやるその義務がある。それとも周りの頭の固いオッサンたちと調子あわせて生きていくかい?」
 その態度は不遜で、傲慢で、しかし妙な迫力に満ちていた。
 その道で数十年と戦い続けてきたものにしか持ち得ないものがあった。
 圭一は少しだけ考えるふりをして、迷うことなく答えた。
「……決まってる」
 圭一は手を父へと伸ばす。
 以前はバットを掴んでいた手を。
 そして、今はペンを握る手を。
 その手を、父が掴む。
 ガシン、と親子で強固に手を繋ぐ。
 圭一は父の目を覗きこみ、はっきりと宣言した。
「僕は同人ゴロになる」

 ――家業を継いでしまう。


        ◆


 綿流しの日より数日後。
 足音と親しい人間の死に追いつめられた圭一は、バットを手に単身宝物庫に特攻した。
 警備の園崎家の人間を張り飛ばし、ついでに宝物庫の扉も跳ね飛ばして、圭一は中へと転がり込んだ。
 すぐさま体勢を立て直し、目標を捜す。
 ……あった。
 すぐ正面、一寸先。
 畏敬の対象であるオヤシロサマの像があった。
 圭一は全ての村民に聞こえるような大声で叫ぶ。
「――見ていろ! 神殺しがいかなるものかを!」
 そして、彼はバットを振るった。

 ――ジ×リの主人公だ。


        ◆


 番外。

 園身沢の入り口。
 村に入る主要道路の先、公民館は常に賑わっていた。
 理由は簡単。観光客と村人がそこに集まるからだ。
 会話に耳を傾けてみれば――
「サァサァ、オヤシロ饅頭、オヤシロ煎餅、今ならお買い得だよ!」
「オヤシロサマTシャツ、今なら二枚で千五百円だよ!」
「夜中に光るオヤシロサマ、子どもさんへのお土産にどうだい!?」

 ――観光名物と化したオヤシロサマ。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆
あとがき。
こんな〜シリーズの最新作は、ひぐらしより前原君でした。


↑作品を面白いと感じた方、押していただければ幸いデス↑
 次回のやる気につながりますので……感想、ひと言遠慮なくどうぞ。

ほとんど思いつきで書いてるこのシリーズ、今回は前原圭一オンリーです。
ネタ元……と思いついたきっかけは下記サイト様のwebcomicです。
初めて見た瞬間は笑いが止まりませんでした……。
あそこの前原圭一にならほんとに惚れます。

次はこんな古手梨花は嫌だ。かな……。
その場合多分初期モデルは『ひぐらしのな』様の梨花ちゃんで。


作品について。
上の方は元ネタなし、真ん中から下は元ネタアリです。
圭一君がこうなら話は二転三転しなかったでしょうね……。
すぐに終わりそうです。あっけなく。
なんか他にも思いついたら情事追加するかもしれません。

ネタ元になった俊様のサイトです。多謝。引用させて頂きました。

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